ずっと一緒に。

●星空の約束

 月明かりの町に、満天の星。
 見とれるような素敵な景色。
 でも。
 ユイにはその景色に叶わないものがあった。
 隣で座るマーリーシスである。
「どうかしました?」
「いや、何も………あ、寒くない?」
 寒そうにしているマーリーシスに、ユイは心配そうに声をかけた。
「大丈夫です。コートも着ていますし」
 そう言ってマーリーシスは微笑む。
「でも、寒いでしょ。僕、お茶を持ってきたんだ。口に合うか心配だけど……」
 ユイは持ってきた水筒から、暖かいお茶をコップに注いだ。
「たぶん大丈夫だと思うけど……火傷しないようにね」
「ありがとうございます♪」
 マーリーシスは嬉しそうに、ユイの注いだお茶を受け取る。
「このお茶……甘酸っぱくて……」
「レモンを入れてみたんだ。どうかな?」
「はい、とっても美味しいです……」
 暖かいお茶で体を暖めた二人は、また、満天の星を見上げた。

 ユイは星を見上げながら思う。
 またマーシーリスと共に、この場所を訪れる事ができるかを。
 いや、先のことは、まだ、いい。
 今は………。
 今はただ………。
 この幸せな時間を過ごせた事に感謝をするのみ。
(「シアワセをアリガトウ」)

 マーシーリスも星を見上げながら。
 今、隣にユイがいること。
 小さな約束を積み重ねていくこと。
 こんな毎日がずっと続いていきますように……。
 そう、星に願いを告げていた。
 ユイには聞こえない、心の声で。
「星が綺麗だと、つい贅沢な願い事をしてしまいますね」
 思わず、ユイは苦笑する。
「何か言った?」
「いえ、何も」
 そ知らぬふりをして、マーシーリスはそう告げた。

 星の綺麗な夜。
 二人はこうして、星々に願いをかけたのであった。
 その願いが叶うようにと………。


イラスト: みなみきつね