星落ちるランララ〜輝く星と君を映し〜
●素敵な思い出
プレゼントを渡すときって、緊張してしまう。
今日の為にチョコレートタルトを作ったんだけど……カズハさんは美味しいって言ってくれるかな?
ああ、とっても心配。
こんな不安を抱えるなら、このまま誰もいない何処かに飛んでしまいたい。
そんな思いを胸に、エスニャはカズハを待っていた。
「遅れてしまったみたいですね」
「ううん。私も、さっき来たばかりだから」
「では、行きましょうか」
カズハのリードで、エスニャは、歩き始める。
目的地は決まっている。
星屑の丘。
既に空では月が輝き、星が降るような。
綺麗な夜空。
「あの、これ作ってきたの」
そう言ってエスニャが取り出したのは、美味しそうなチョコレートタルト。
「チョコレートタルトよ。お口に合うか……」
「いいんですか?」
「ええ、どうぞ!」
エスニャはさっそく持ってきたナイフでタルトを切り分ける。
カズハはエスニャの切り分けたタルトを受け取り、一口。
「美味しいです、とっても。甘さ控えめで、私は好きですよ」
「あ、ありがとうございますっ!」
嬉しい言葉を聴けた。
もう、これだけでエスニャは幸せだった。
幸せすぎて、何を話していたか、よくわからない。
だけど。
「エスニャさん、今日はありがとうございました。とても美味しかったです。これからも……美味しいものを作ってくださいね」
「カズハさん……」
そう、カズハが言ってくれた事。
「ランララの日に、二人で一緒にいる事ができるって幸せです……」
「ええ」
二人で一緒に幸せな時間を過ごせた事。
(「私はこうやって二人で過ごす時間を、ずっと忘れませんよ……」)
エスニャは星空を見上げながら、それらの素敵な思い出を大切に、胸の中にしまったのであった。
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蘇る小夜曲・カズハ
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流麗なる夜想曲・エスニャ
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イラスト: 烏丸