一緒に帰ろう

●素敵な帰り道

 大切な人。
 大切な恋人。
 そして、大切な婚約者。
 二人は星屑の丘からゆっくりと、帰路に向かっていた。
 空には宝石のような星々が、二人を祝福しているかのように。

「トリュフ、ありがとう」
「どういたしまして。口に合うといいんだけど……」
 ほんの少しのリューシャの心配。
「リューシャが作ってくれるものなら、何でも美味いよ」
「ありがと……」
 星屑の丘でトリュフを受け取ったヤヨイ。
 リューシャは嬉しそうに微笑んでいた。
 ヤヨイも嬉しそうなリューシャの顔を見ていると、自然と笑顔になっていくようだ。
「今日はもう寒い。後は家でな」
「うん……」
 二人はゆっくりと歩いていく。
 リューシャはヤヨイに遅れないように少し早めに。
 ヤヨイはリューシャの足に合わせてゆっくりゆっくりと。
 幸せそうに、腕を組みながら……。

 リューシャは大切な恋人。
 そして、婚約もした仲だ。
 だが………。
 最近は忙しく、なかなか一緒に居れなかった。
 側に居たかった。
 けれど、それは叶わぬこと。
 そう言い聞かせて、今日まで来てしまった。
 だから、今日一日……。
 ずっと一緒に居れた事が……俺は一番嬉しい。
 この先も、ずっと一緒に……。

 視線を感じる。
 優しい視線。
 暖かい視線。
 ほら、見上げればヤヨイの瞳が、すぐそこにある。
 思わず微笑みあう。
 そして、リューシャはヤヨイの腕に強く抱きついた。
「好きだよ……」
 小さな囁き。たとえ聞こえなくてもいい。きっと、相手には伝わっているから。

 大好きな彼と一緒に過ごす日。
 リューシャはとても幸せだった。
 もちろん、ヤヨイも。

 二人は仲良く帰っていく。
 今まで一緒に居れなかった分を取り戻すかのように、寄り添いながら。
 幸せな時間はまだ、続くのであった………。


イラスト: 夏目京治