共に生きよう…

●夢見る眠り姫

 小鳥がさえずる泉。
 ほのかな日の光が、心地よい。
「す、すみません、遅れてしまってっ!」
 息を弾ませやってくるのは、ソエル。
「気にするな。俺もさっき来たばっかりだから」
 そういって微笑むエルド。
 実は……かれこれ1時間前に来ていて、ぼーっとしながら待っていたりする。
 でもこれは、ソエルには内緒。
 いや、知らなくても良い事なのだ。

 気に入った木陰を見つけて、二人は腰掛ける。
「エルドさん、その、口に合うといいのですけど……」
 そう言ってソエルが手渡すのは、手作りのお菓子。
「ありがとう」
 ソエルのお菓子を受け取るエルド。
 包みを開けようとして、エルドはふと、手を止めた。
「開けてもいい?」
 まずは聞いてみないと駄目だ。
「どうぞ」
 にこりと微笑むソエル。
 包みを開けて、お菓子を見る。
「うわ、美味そう。それじゃあ、いただきます」
 お菓子を一つ、口に入れる。
「どう、ですか?」
 はらはらと見守るソエル。
「うん、美味しいよ。また腕を上げたんじゃないのか?」
 その言葉にソエルは嬉しそうに、照れたように俯く。
「あ、ありがとうございます……」
「こちらこそ、美味しいお菓子をありがとう」

 エルドがお菓子を食べ終える頃。
「……すぅ……すぅ……」
 静かな寝息。
 試練の疲れがあったから。
 お菓子を渡せた安堵から。
 どれも言い訳にしかならないけれど。
 けれど。
 まぶたが重くて。

「ん? 寝ちゃったのか……」
 顔にかかる長い髪をよけてやりながら、エルドは寝ているソエルを見つめていた。
 微笑。
(「おまえと一緒に、未来を紡ぐのも悪くない」)
 心の言葉は伝わらないかもしれないけれど、ソエルの手に添えたぬくもりならば……。
「………愛しています」
「え?」
 寝言だろうか?
 それとも、自分の想いが言葉になって聞こえてしまったのか?
「俺も、だ……」
 囁くようにそっと。

 夢の続きは、貴方と共に紡いで行けますように………。


イラスト: 弓槻みあ