〜Proposal〜「結婚…しよっか?」

●いっしょになりたいきもち

 特別な時間。
 二人だけの時間。
 空には星が瞬き、今の時間を彩る。
 こうして二人っきりでいるだけで、今まではよかった。
 だけど、これからは……。

 そわそわ。
「?」
 その日、デュラシアはいつになく、落ち着きがなかった。
 その様子にアヤは首を傾げるばかり。
「どうしたんでしょう?」
 ほわわんとした空気を纏いながらも、アヤは密かにデュラシアの事を心配する。
 と、デュラシアが立ち止まる。
 そこは、星が綺麗に見える丘。
「わあ……」
 二人は背中を合わせるように空を見上げた。
「デュラシアさん、見てください! こんなに星が綺麗ですっ」
 はしゃぐようにアヤは両手を仰ぐ。
「う、うん」
「………どうしたんですか? さっきからずっと元気ないですよ?」
 そう言ってアヤが振り向こうとしたとき。
「あのね、アヤちゃん」
 デュラシアの声でさえぎられた。
「はい」
 僅かな間。
「そのですね」
 そして、躊躇い。
 デュラシアが何かを言おうとしている。
 アヤは緊張した面持ちで、その言葉を待った。
「結婚、しよっか?」
「え?」
 デュラシアから告げられたのは、思いがけない言葉だった。

「……あ、返事はまだ後でもいいよ。急ぐもんでもないし。でも……俺がそう思っているってだけ、伝えたかっただけで……………アヤちゃん?」
 無言。
 ただただ、静かで。
 けれど、それはデュラシアには耐えられなくて。
 振り向き、アヤを見た。
「あ、アヤ……ちゃん?」
 アヤの瞳には、大粒の涙が零れ落ちていた。
「え、あ、その、俺、なんか悪いことでも言った? えっと、やっぱ俺とは………」
 アヤの涙に慌てるデュラシアに、アヤは首を横に振った。
「そうじゃ、ないです」
 アヤは続ける。
「わたし、デュラシアさんが世界一好きで、デュラシアさんと一緒にすごせるだけで、それ以外は何も要らないんです……。これからもずっと側にいたいって……そしたら、デュラシアさんから嬉しい言葉をもらって……」
「アヤちゃん……」
 ごしごしを瞳をこするアヤ。
「嬉しくて嬉しくて……ご、ごめんなさい。泣くつもりなかったのに、涙が止まらない……」
 そんなアヤを、デュラシアは強く抱きしめたのであった。
 アヤの涙が止まるまで、ずっと……。


イラスト: 光無月獅威