月光と水鏡に抱かれて

●素敵な夢と、夜の泉

 静かな夜。
 静かな泉。
 二人は泉の畔をゆっくりと歩いていた。

「あのね……」
 はじめに声を出したのはハクカだった。
「何だ?」
 カイルの優しい声に、ハクカは恥ずかしそうに俯く。
「笑わないで聞いてね……」
 カイルは黙って頷いた。
「その……最近、カイルの夢を見るの………」
「私の?」
 思いがけない言葉に、きょとんとするカイル。
 その言葉に、今度はハクカが黙って頷いた。ハクカの頬がうっすらと紅く染まっている。
「あ、や、やっぱり言わなきゃよかったよぅ〜」
 恥ずかしそうに逃げるハクカ。
「あ、ハクカ………」
 カイルが追いかえる。
 そして、ハクカはすぐにカイルに捕まってしまった。
「そんなに恥ずかしがらなくても……」
「だ、だって………」

 言えない。
 夢に見るほど、あなたが好きだということを。

「私も……最近、ハクカの夢を見るようになってな……」
「え?」
 カイルの告白。
 カイルはにこりと微笑み、ハクカを抱きしめた。
「……ずっと……一緒にいような、ハクカ……」
「カイル………」
 ハクカの瞳に涙が溢れ出した。
 抱きしめられたまま、暖かいぬくもりを確かに感じながら……。
「うん、一緒にいようね………約束、だよ……」

 月明かりが、泉を照らす。
 泉は煌き、夜の森を彩る。
 二人だけの時間。
 大切な時間は、ゆっくりと確かに……二人だけの想い出へと変わっていくのであった。


イラスト: 光無月獅威