Dancing Flower in the Wild Wind

●甘いケーキに思いをのせて

 いつの間にか夜になっていた。
 二人は夜の花園をゆっくりと歩いていく。
 美しい花園。
 花達は昼とは違う、夜ならではの顔を見せていた。
「夜の花園も素敵ですわね……」
「おう、そうだな」
 アコの言葉に頷くジョジョ。
 と、アコは気づいた。
「どうかしたんですの?」
 ジョジョはまじまじと花を眺めていた。
「いや、こういう所ってあんまり来ないからさ。こうして見ると……花も綺麗なんだなってな」
 その言葉にくすくすとアコは微笑んだ。
「な、なんだよ。笑うことないだろ?」
「ご、ごめんなさい……。あなたが花に興味を持つなんて、ちょっと意外だなって思ってしまいまして」
「そんなに意外か?」
 自分の髭を弄びながら、ジョジョは眉をひそめる。
「あ。ジョジョに渡したいものがあるんですの」
 アコは今日の目的を思い出した。
 今日はランララ聖花祭。
 お菓子を手に告白する日である。
「渡したいものって……」
 アコはそっと手にしていた箱を手渡した。
「開けてもらえます?」
「あ、ああ……」
 箱の中にはチョコレートケーキ。
 その上には小さなジョジョを模した飾りと『Jojo the Wild Wind』の文字が刻まれていた。
「アコ……」
「わたくしはいつでも……狂風に舞う華で、ありたいのです」
 それは、ジョジョの側にずっといたいというメッセージ。
 ジョジョは照れたように困ったように、けれど嬉しそうに言った。
「ありがとう、アコ」

 二人は寄り添い、星がきらめく空を見上げる。
 いつもと違う特別な日は、二人っきりでいつまでも………。


イラスト: 佐々木なの