今夜月の見える丘に

●愛しき人のぬくもり

 星が瞬く頃。
 二人は星屑の丘に来ていた。
 美しい星々が二人を歓迎するかのように煌いている。
「夜空が、綺麗じゃな……」
 トトギが呟くように告げる。
「そうだね。まるで星が降るような夜空だよ」
 トトギの隣にいるマイアーが微笑む。
 二人は揃って見上げ、星を眺めていた。
 と、小さな風が吹く。
 ほんの少しの間だが、寒さを感じるのには十分だ。
「うっ、さすがに夜は冷えるのう……」
 僅かに震えるトトギにふわりと暖かいものがかけられた。
「だったら……ほら、こうすれば暖かい」
 それは、マイアーのマフラーであった。
「一つしかないから、あんまり離れないようにね」
 そのマイアーの言葉に、トトギは少し戸惑いながらも、確かに頷くのだった。

 一つのマフラーを二人で使う。
 一人でしていたよりも、暖かいぬくもりを感じる。
 これから先、来年、再来年の今頃も、この場所でこうして二人で星を眺められたなら……。
 いや、願いではない。
 きっと出来るはず。
 今までも出来たのだから、これからも。
 流れる星にマイアーは、そう決意して………。

 こんなに近くにいる。
 そして、こんなにも暖かい。
 愛しいほどに。
「どんなに寒い夜でも、そなたの温もりを感じることが出来たら……」
 思わず、トトギは気持ちを言葉にしていた。
「何か言った?」
 耳元で囁くようなマイアーの声。
「あ、その……暖かいのう……」
「そうだね。僕も暖かいよ……」
 トトギの言葉は届いたのだろうか?
 いや、それよりも。
 今はこのぬくもりだけを感じよう。
 二人だけの幸せなぬくもりを……。


イラスト: 桜木晶