美味しいですか…?

●桜色の花びら

 心地よい昼下がり。
 朝露の花園の色とりどりの花の絨毯に、二人は並んで座っていた。
「あの、これ………プレゼントです………」
 恥ずかしそうにミアは、アルフレッドに桜色の袋を手渡した。
 それはミアが一生懸命作った、お菓子。
「僕に?」
 ちょっと驚いているようだ。
 そのアルフレッドの言葉に、ミアはこくんと頷いた。
「ありがとう、ミア。嬉しいよ」
 礼を述べるアルフレッド。
「あの、よかったら……食べてみて……」
「いいのかい?」
 ミアは、またこくりと頷いた。

 どきどきどきどきどき。
 アルフレッドは、桜色の袋を開け、中身を見た。
 小さな花びら。
 小さな桜。
 いや、小さな飴。
 そこには、小さく桜の形を模した飴が沢山入っていたのだ。
「うわあ、こんなに沢山……大変じゃなかった?」
「そ、そんなに難しくないから、大丈夫……」
「なんだか食べるのがもったいないな……」
 思わずアルフレッドは苦笑する。
 でも、今は食べなくてはならない。
 飴を一つ取り上げ、口に含むアルフレッド。
 口の中で広がる甘さを、ゆっくりと楽しんでいた。
 どきどきどきどきどきどきどきどき。
 ミアは緊張した面持ちで、アルフレッドを見ていた。
 美味しくないといわれたらどうしよう?
 不味いといわれたらどうしよう?
 もし、吐き出しちゃったらどうしよう?
 ミアの心配は止まる事を知らない。

 と、アルフレッドと目が合った。
「ん、美味しいよ」
 にっこりと微笑んで、そう伝えた。
「凄く、嬉しいです……。貴方に喜んでもらいたくて作りましたから……」
 ミアも嬉しそうに微笑んだ。

 花びらが舞う。
 強い風に吹かれて。
 そして、アルフレッドの口の中には、甘い花びらが広がっていく。
 ミアの作った花びらの数だけ……。


イラスト: 笹本カオリ