ランララ×お菓子×メイド服(?)

●メイドさんになろう!

「なんで僕がこんな格好せにゃならんのだ………」
 鏡の前でぽつりと呟くのはトト。
 その鏡には、黒く愛らしいワンピースに、ひときわ似合う清楚な白いエプロンを装着した姿が映っていた。
 誤解ないように伝えておくが、トトは男性である。
 可愛い女の子にぴったりな一着なのだが……なぜかトトにも似合っているのだ。
「やっぱり似合うな、トト殿は。可愛い可愛いっ!!」
 トトとお揃いの格好をしたルーシェンは、上機嫌でトトの頭を撫でていた。
「はぁ〜〜〜」
 思わずため息。
 トトはがっくりと肩を落とした。

 なぜトトがこのようになったかというと……。
 時間はさかのぼり、数時間前。
「よし、ランララ聖花祭限定の商品を販売するのじゃ!」
 ルーシェンは皆を集めて、ランララ聖花祭にちなんだ、素敵なお菓子を作り上げた。
 いや、作り上げるだけでは、まだ足りない。
「そう、売る者達も集めなければならんのじゃ」
 うむと頷き、考える。
「やはりここは………」
 素敵なワンピースとルーシェンの視線が合った。
「これ、じゃなぁ〜」
 うむうむと頷く。
「皆にも見てもらわなくてはっ!!」
 なにやら、ルーシェンの心に一種の使命感(?)が生まれたようだ。
 なお、また誤解しないように伝えておくが、自分が着て見せるのではなく、トトに着せて見せる事を指している。
「こうしてはおれん! まずはこの服の洗濯から始めんとなっ!!」
 こうして、ルーシェンの企み……いや、楽しい計画が実行に移されたのである。

「いらっしゃいませ〜♪」
 可愛い子が店番をしている。
 いや、可愛いトトが店番をしているのだ。
「むむ、これほど売れるとは……」
 売り上げは上々。
 お菓子の見た目もさることながら、トトの可愛らしい接客もプラスされて、ルーシェンの予想を大きく上回っていた。
「いらっしゃいませ〜♪」
 トトがちょっと自棄になっているのは、気のせいだろうか?

 この日、隠れ茶屋―朧月―は、夜遅くまで賑やかだったと言う……。


イラスト: 小林蕪