大切な貴方と2人で・・・これからもずっと・・・♪

●疲れた後のティーパーティ

(「こんなにしんどいなんて、聞いておらんぞっ!!」)
 ヴィクトは、ランララの試練を一つ一つ乗り越えながら、そう、心の中で叫んだ。
 仮面の人を信用してしまったり、健気な女子を手伝ったりと……試練の八割は躓いていた。
「アダムを待たせぬように行こうと思ったんじゃがな……」
 道はまだ遠く、険しい。
 ヴィクトは、丘の上で待つ恋人を思いながら、深いため息をついたのであった。

 一方、アダムは、ヴィクトよりも早めに目的地にたどり着いていた。
「ヴィクト様、早くいらっしゃらないかしら?」
 わくわくそわそわ。
 アダムの手には、少し大きめのバスケット。
 この中にはヴィクトに食べさせてあげたいお菓子などがいっぱい入っている。
 わくわくそわそわ。
 ヴィクトが早く来ないかと、アダムは心を躍らせながら待っていたのであった。

 そして、夕方。
 ヴィクトはやっと、目的地である星屑の丘にたどり着いた。
 ヴィクトは見るからに、息絶え絶えであった。
「遅くなってすまんかった、アダム。待たせてしもうたな……」
 ぺこぺこと頭を下げるヴィクトに。
「いいえ、わたくしも先ほど着たばかりですの」
 それは、アダムの心遣い。
 アダムは、本当はかなりの時間を待っていた。
 けれど、ヴィクトのへとへとな姿。
 必死になって全ての試練を乗り越えてきた姿に、何も言えなくなってしまったのだ。
 それに、ヴィクトに逢えた。
 それだけでアダムの胸はいっぱいであった。
「心をこめて作りましたの、どうぞ召し上がってくださいませね♪」
 アダムはてきぱきと敷物を用意し、バスケットの中身を並べる。
 沢山のクッキー、サンドイッチ。そして、暖かい紅茶が出てきた。
「おぉ、こりゃ美味そうじゃ……」
 ヴィクトの疲れが一気に消えていくようであった。
 それほどまでに、アダムの作ったものは、とても美味しそうであった。
 もちろん、味も申し分ない。
 サンドイッチをあっという間に平らげたヴィクトは、最後の楽しみと言わんばかりにクッキーに手を伸ばした。
「あ、わたくしが口に入れて差し上げますわ」
「え?」
 そのアダムの申し出に、ヴィクトは驚く。
「はい、あーんしてくださいまし♪」
「あ、ああ、そうじゃな………あーーん」
 ヴィクトは照れたように口を開く。そこに一枚のクッキーが運ばれた。
 口の中に広がる、甘くてとろけそうな、美味しいクッキー。
「わしは幸せじゃのう……」
 ヴィクトは、ほろりと涙が出そうになった。
 そのくらい、ヴィクトは嬉しかった。
 暖かい紅茶も疲れた体に、とても優しい。
「アダム……」
 耳元でそっと囁くように。
「今日は、ありがとうなのじゃ」
 くすぐったい様な暖かい言葉。
「どういたしまして。喜んでもらえて、光栄ですわ」
 こうして二人は、ちょっと遅れたデートをはじめる。
 遅れた分だけ、デートの時間も少なくなってしまったが、二人にとっては幸せな思い出となったことだろう。


イラスト: 水崎漣