〜 Shooting Star 〜

●あなたの願い事は?

 夜。
 辺りが闇を支配する夜。
 だが、夜だからこそ見えるものがある。
 小さなきらめき。小さな星々。
 ときには川のように見える、その星は闇の中に浮かぶ、特別な宝石。

「星が……綺麗じゃのう」
 ラピスは空を見上げながら、ゆっくりとそう告げた。
「そうだな。この空を見上げていると、時間が経つのも忘れてしまうな」
 その隣でコウショウがそう、頷いた。
 ここは、星屑の丘。
 夜空を眺めるには絶好の場所である。
 二人は丁度良い木に寄りかかりながら、こうして、何時間も空を見上げていた。

 ここに流れるのは、二人きりだけの刻。
 ラピスは空を眺めながら、隣にいるコウショウの横顔を盗み見る。
(「願わくば……これが永遠に続くように……」)
 熱くなる胸をそのままに、ラピスはまた、空を見上げた。

 今、この間だけ二人だけの時間出来るのなら、あの瞬間を待つ。
 コウショウは、そっとラピスの横顔を見た。
 嬉しそうに見上げているラピスの顔を見ていると、思わず顔に笑みが零れる。
(「願うならば……この時間、気持ちが永遠に続くことを……」)
 そう、コウショウは願わずにはいられなかった。

 どのくらいの時間が経ったのだろう。
「にゃ! 流れ星じゃ〜!」
 いち早く見つけたのはラピス。
 指を指して、流れる星を追う。
 そして、星はあっという間に消えてしまった。
 残念そうにため息をつく二人。
「流れ星……願い事とかあるのか?」
 コウショウがふと、ラピスに訊ねる。
「願いかや?」
 驚いたようにコウショウの顔を見るラピス。
 そして、にっと笑う。
「にししし 秘密じゃよ♪ 汝は?」
 逆に質問されて、コウショウは少し慌てて。
「ぅ……うーん……やっぱ俺も秘密で」

 二人はまだ、知らない。
 実は同じ事を願っていた事を。

 一緒にいられますように……。


イラスト: 水生紫蓮