穏やかな日に〜スィートクッキー

●甘いお菓子を一緒に

 喜んでくれるかしら?
 デートにプレゼントを持っていくとき。
 誰しも不安になるものだ。
 それがずっと一緒にいた相手だとしても……。

 小鳥達が可愛い声でさえずる場所、さえずりの泉。
 そこでは、金髪のカップルがちょこんと座っていた。
 女性……ジャニスは緊張した面持ちで。
「あの……」
 そう、声をかけた。
「はい?」
 にこりと微笑み、訊ねるシン。
 ジャニスは大切な何かを選ぶように何度も戸惑いながらも口を開いた。
「クッキーを焼いてきたんです。よかったら、どうぞ」
「いいんですか? ありがとうございます! 本当に……嬉しいです」
 にこにこと喜ぶシンを見て、ジャニスはまだ緊張を解いていない。
「では、さっそくいただきますね」
「え、あ……はい……」
 その理由は、クッキーの入った包みの中にあった。
 シンが開いたクッキーの中にあるのは………形の悪いクッキー。
「あ、で、でも美味しいのよ、味見した私が言うんだから、安心してっ!!」
 いつの間にか早口で、ジャニスはそう説明する。
 その様子にシンはくすくすと笑っていた。
「そんなに慌てなくてもいいですよ。それに……いい香りです。食べなくても美味しい事はわかります」
「シンさん………」
 シンはさっそくクッキーを一つ食べる。
「思ったとおり……この一枚一枚に気持ちがこもっているのが伝わってきます……おいしいですよ」
 そう言って微笑む。
「あ、ありがとう……」
 照れたように礼を述べるジャニス。
「そうそう、せっかくですから、一緒に食べませんか?」
 突然持ちかけられた提案。
「え、その……い、良いん、ですか?」
 少し戸惑いながらも、訊ねるジャニスに。
「もちろん」
 シンは笑顔で頷いたのであった。

 二人は木漏れ陽の中、お菓子を楽しんでいた。
 少し不ぞろいな形のクッキー。
 けれど、二人にとっては甘い甘いお菓子になったのであった。


イラスト: 水生紫蓮