穏やかで、緩やかで、飾らない。そんな贅沢な時間。

●恋人たちの昼下がり

 暖かく、心地よい。
 気分の良い天気に、アルルは嬉しかった。
「美味しいっ!」
 アルルの前には、リオンが嬉しそうに笑っている。
「アルルの作ったお弁当、とっても美味しいよっ!」
「そう言ってもらえると嬉しいな」
 笑顔でアルルも答えた。

 二人はさえずりの泉の畔で、少し遅いお昼を楽しんでいた。
 こんな風に二人きりで過ごしたのは、いつの事だろう?
 久しぶりの休日に二人は、はしゃいでいるようだった。
「頑張った甲斐があったな」
 喜んで食べるリオンを見ながら、アルルは満足げに微笑んだ。
 リオンのために朝早くに起きて作ったお弁当。
 アルルの心のこもったお弁当が美味しくないことはないのだ。
「きゃっ!」
 と、突然の強い風が吹く。
 もう少しで、持っていたナプキンが飛ばされるところであった。
「もう、嫌になっちゃう……」
 不機嫌なアルルにリオンは。
「でも、なんだか綺麗だよ。ほら」
「え?」
 リオンの言われるがままに上を見上げるアルル。
「わあ………」
 たくさんの花びらがゆっくりと舞い落ちる光景。
 それはアルルを喜ばせるのに十分な、素敵な光景であった。
 リオンは、お弁当を食べる手を休め、その花びらを眺める。
「こういうのも、いいよね……」
「え?」
「僕とアルルの時間が1つになって、ゆっくりと流れてる。そんな気がしたんだ」
 そう言ってアルルを見つめるリオン。
 リオンの言葉にアルルは頷いた。
「そうだね。私達……本当に恋人になったんだね」
 そして、二人は微笑む。
「嬉しいな」
「僕も」

 花びらが舞い散る午後。
 恋人達はまた、楽しいお昼を再開した。
 二人っきりの幸せな時間を………。


イラスト: 的場つかさ