すれ違いのランララ聖花祭

●来年こそはきっとっ!

「はあ…………」
 今日はこれで何度目であろうか。
 今頃は、ミュリンと楽しくランララ聖花祭を楽しむはずであった。
 お菓子も身だしなみも、ランララ聖花祭で話すことも、全て準備を終えていた。
 だが、ここに来て、悲しい出来事が。
 当日になって、肝心の待ち合わせ場所を忘れてしまい、会場を右往左往してしまったのである。
 結局、ミュリンには会えずに、今、帰路に向かおうとしている。
「はあ…………」
 またため息。
「ちゃんと、待ち合わせ場所を覚えていたら、こんなことには………」
 と、そのとき。
 アルシェンドの頭の中で何かが閃いた!
「よしっ!!」
 アルシェンドは笑顔で、Uターン。
 元気良く駆け出していったのである。

 誰しも、好きな人の家を訪ねるというのは、緊張するものだろう。
 もちろん、アルシェンドも例外ではない。
 恐らく、もう戻っているはず。
 それほどの時間が経っていた。
 アルシェンドはドアを叩いた。
 ノックを2回。
 返事が無い。
 いないのかとアルシェンドが諦めかけたとき。
「はーい」
 聞き覚えのある声が聞こえてきた。
 がちゃりと開いたドアには、ランララ聖花祭で会えなかったミュリンがいた。
「アルシェンドちゃん」
「ミュリンっ! 今日は待ち合わせの場所を忘れてしまって……いや、約束したのに行けなくて、本当にすまなかったっ!」
 そのアルシェンドの言葉にミュリンは、にっこりと微笑んで。
「ううん、気にしないで。それにわざわざ来てくれてありがと。ランララ聖花祭は逢えなくて残念だったね」
 嬉しそうに、そして、少し残念そうにミュリンはそう告げた。
「ミュリン………」
 そんな表情にアルシェンドは、胸が締め付けられそうであった。
「ミュリン、来年こそは、絶対に一緒に行こう! 今度は絶対に忘れないから」
 思わず出てしまった、突然の申し出。
「え? 来年?」
 きょとんとしてしまうミュリン。
 その様子にアルシェンドは固まって赤面してしまった。
(「も、もしかして、意味不明なことを……」)
 そう俯き、恥じるアルシェンドにミュリンは。
「うん。じゃあ来年は一緒に行こうね」
「え?」
 にこにこと微笑みながら、ミュリンはアルシェンドの申し出を受けてくれたのだ。
 しかもそれだけではない。
「そうだ。折角だしお茶飲んでいかない? ケーキもあるんだ♪」
 ね、ね? とミュリンが誘ってくるではないか。
「も、もちろん喜んでっ!!」

 ちょっぴり失敗した日。
 けれど、アルシェンドにとって、今日はとても幸せな日になったようである。


イラスト: 杯 覇耶