●眠れる森の王子様

 ランララの試練を乗り越えやってきたジン。
「ふう、やっと着いた……。ジルは……まだ着いてないか」
 きょろきょろと辺りを見渡すが、ジルはまだ来ていないようだ。
 恐らく、ここまで来るのに時間がかかっているのだろう。
「ま、のんびり待つとしますか」
 ジンはごろんと草原に横になった。
 木々の隙間から零れる淡い陽の光。
 心地よい風。
「Zzz…………」
 ジンはジルを待ちながら、いつの間にか眠ってしまったようであった。

 ………。
 ………………。
 そして、時は過ぎ。
「う、う〜ん………」
 どうやら、少し寒くなってきたようだ。
「…………はっ、寝ちまった! も、もう日が沈んでる!?」
 辺りを見渡せば、もう日が暮れて空には星が瞬き始めている。
 しかも、隣には。
「おはよう、ジン」
 にっこりと微笑むジルがいた。
「え〜と、ジル、ずっと待っててくれたのか……」
「うん。でも、気持ち良さそうだったから……」
 ジルはジンを起こせなかったようだ。
 ジルの側には、ほのかな光を放つランプが置かれている。
「それに、ボクもジンを待たせちゃったから、おあいこだよ」
 そういうジルに、ジンの胸が熱くなる。
「あ、そうそう、ジンにプレゼント持ってきたから、後でちゃんともらってよ」
 ジンはバツが悪そうに頭を掻きながら。
「あぁ、うん」
 謝る代わりにジルの手の上に、そっと自分の手を乗せた。
 ジルは嬉しそうに微笑む。
「じゃ、行こうか」
 ジンが立ち上がり、ジルの手を引いた。
「うんっ♪」
 二人は揃って、歩いていく。
 彼らのデートはこれから始まる。
 二人、手を繋ぎながら………。


イラスト: 杯 覇耶