幸せな時間

●側にいるだけで……

 二人の待ち合わせ場所は、女神ランララの木。
 最初に試練を乗り越え、たどり着いたのは、ルーク。
「どうやら、まだ来ていないのかな」
 辺りを見渡し、待ち合わせをした相手、クラレットの姿を探す。
 だが、どうやら、まだ来ていないようだ。
 ルークは彼女が来るまで、木に寄りかかり待つことにした。

 ぱたぱたと走るのは、クラレット。
 もう来ているだろうか?
 それとも、まだ来ていないのだろうか?
 そんな風に相手を想い、相手が何をしているのかを考えるだけで、なんだか嬉しくなってしまう。
 その手には、ルークに渡そうと持ってきたお菓子があった。
「喜んでくれるでしょうか?」
 不安と期待がごちゃまぜになる。
 けれど、顔は笑顔。
「早く行かないとっ!」

「やれやれ……ようやくたどり着けたね」
「すみません、遅れてしまいました」
 謝っているのについ、微笑んでしまうのは、きっと大切なあなたに会えたから。
 クラレットは、さっそくお菓子を手渡した。
「ありがとう、クラレット」
「喜んでもらえて、私も嬉しいです」
 お菓子を食べて、お腹も満足したルーク。
 と、日頃の疲れか、ルークのまぶたは重くなってきたようだ。
「何だか眠くなってきたな………ごめん、少し休ませて」
「ええ、どうぞ」
 木に寄りかかり、ルークはすぐ眠りに落ちてしまう。
 それをクラレットは、微笑みながら見守っていた。
「ルーク……愛していますよ……」
 聞こえていなくてもいい。
 こうして側にいられるのなら……。
 ルークが再び目覚めるまで、クラレットはそこから見える風景とルークの横顔を眺めているのであった。


イラスト: 飛鳥部暁生