ランララ聖花祭〜試練を越えて〜

●僕は負けません!

 迫り来る危機!
 迫り来る困難!
 迫り来る試練!!
 いくつもの試練を乗り越え、ティエンは恋人のリヒトンの待つ丘の上を目指していた。
 どうやら、ティエンの選んだ試練は、数多くの試練の中でも熾烈なものを選んでしまったようだ。
 ティエンの体はぼろぼろになりながらも、必死になりながら、丘を目指して駆け上がる。
「くっ……もう少しだ……!!」
 もう少しで、愛しいリヒトンに会えるかと思うと、いても立ってもいられないティエンであった。

 一方、リヒトンはというと。
 ティエンよりも早く待ち合わせ場所にたどり着いていた。
 どうやら、リヒトンは、彼の試練よりも楽な試練を選んだようだ。
 だが………。
 あっちへ行ってはうろうろうろ。
 こっちへ行ってはうろうろうろうろ。
(「遅いですねぃ〜どうしたんでしょうかねぃ〜もしかして、忘れているんでしょうかねぃ〜」)
 ティエンのことを何よりも心配していた。
 ある者はこの、心配する時間が楽しいと言う事もあるだろう。
 だが、リヒトンにとっては、不安で胸がいっぱいになっていた。
「ティエンさん〜」
 リヒトンは、今にも泣き出しそうになっていた。

 そして、数時間後。
 ティエンはやっとリヒトンのいる丘までたどり着けた。
「え、えっと………リヒトンさん、リヒトンさんは………」
 すぐに見つけた。
 大きな木の下で、ずっと待っていたリヒトンの姿を。

「ティエンさんですねぃ〜」
 さっきの不安はどこへやら。
 もう、リヒトンは笑顔になっていた。
 嬉しくなって、リヒトンはティエンの元へと駆け出す。
「ティエンさ〜んっ!!」
 二人は互いに駆け出し、そして。
「あっ!」
 リヒトンがティエンに飛びつくように躓いた。

「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫ですねぃ〜〜」
 転びそうになるリヒトンを、ティエンはきちんと受け止めたのだ。
 お陰でリヒトンは怪我一つせずに済んだ。
「ずっと……ずっと待っていたんですねぃ〜〜」
 ほっとしたのか、リヒトンの瞳に涙がにじむ。
「お待たせしてしまって、すみませんでした」
 そう謝るティエンにリヒトンは首を横に振って、嬉しそうに微笑んだ。
「ちゃんと来てくれたですからぁ〜〜それだけで充分ですねぃ〜〜」
 ふと、リヒトンはティエンの姿に気づいた。
 どんなに困難な試練を越えてきたのだろう。
 そう思わせるほどに、ティエンはぼろぼろになっているのに。
「ティエンさん、お手当てですねぃ〜〜」
「あ、いいですよ、これくらい大したこと……痛っ!!」
「無理しちゃだめですねぃ〜〜」
 思わずティエンは苦笑する。
 その後、ティエンは大人しく、リヒトンの治療を受けることとなる。

 こうして、二人のデートが始まった。
 少し遅れてしまったけど。
 少し怪我をしているけども。
 きっと、二人にとっては、とても素敵な一日になったに違いない。


イラスト: 琥姫ミオ