雪降る丘
● 雪降る丘
ランララ聖花祭の日、リヒトンとティエンの姿は、雪の舞う庭園にあった。
「もう少しで完成なのですねぃ〜」
雪の積もった地面に屈み込んで、リヒトンが作っているのは雪のうさぎ。ぎゅっ、ぎゅっと手のひらに力を込めながら、うさぎの形に雪を整えていく。
ティエンは、そんな彼女の様子を見守っていたけれど……作業に没頭するリヒトンの頭や肩の上に、はらはらと、はらはらと舞う粉雪が、少しずつ積もりゆくのを見ると、それをそっと伸ばした手のひらで、優しく払い落とす。
「リヒトンさん、あんまり雪に降られると風邪を引くよ?」
言いながら、ティエンは番傘を広げると、それをリヒトンの上に差す。彼女の上に雪が積もらないように、彼女の体が冷たくならないように。
「ありがとうですねぃ〜」
リヒトンはそうティエンの顔を見上げると、また再び雪うさぎを作る作業に戻る。
微笑みながら見守っているティエンの眼差しを受け止めながら、やがてリヒトンは雪うさぎの姿を完成させると、最後の仕上げに、赤い実でうさぎの目を、緑の葉でうさぎの耳を付ける。
「完成なのですねぃ〜」
満足げに笑ったリヒトンは、雪うさぎを手に立ち上がると、「これはティエンさんにプレゼントなのですねぃ〜」とティエンを見つめる。
今年も一緒にランララ聖花祭の日を迎えられた事。それが、とてもとても嬉しくて……。
あんまり恥ずかしい事は出来ないけれど、でも、この位ならばと、そうリヒトンはティエンに雪うさぎを差し出す。
「ありがとう……リヒトンさん」
ティエンは笑みと共に雪うさぎを受け取ると、空いているもう一方の腕を伸ばす。
触れたのはリヒトンの体。そのまま、彼女の体を抱き寄せる。
「ティエンさん……」
リヒトンも腕をティエンの体に回す。雪うさぎを作っている間に、冷えてしまった体が、ゆっくりとゆっくりと温まっていく。
「………」
ふと、ティエンを見上げた瞳は、リヒトンを見つめる優しげな視線と絡んで。
二人はただ、静かに無言で見つめ合うと、そのまま……。
ゆっくりと二人の影が重なる中、辺りにはただ静かに、真白な雪が降り積もっていた――。
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翡翠の脱兎女・リヒトン(a01000)
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聖天に舞う神翼の刃・ティエン(a00455)
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イラスト: さとをみどり