夢でも、幻でもなく……

● ランララ聖花祭〜夢でも、幻でもなく……〜

 星が瞬く頃。
「おっしゃー、攻略〜♪」
 ルガートは、ご機嫌で女神の木の下にやってきた。
「とは言っても、誰かと待ち合わせとかしてないけどな」
 思わず苦笑を浮かべる。
 ルガートがさっさと帰ろうとしたそのときであった。
 不意に視界に入る、見覚えのある空を映したような鮮やかな青い髪の少女が目に入った。
「……ユ、ユウリ!?」
 期待などしていなかった。
 いや、していなかったといえば、嘘になる。
 だが、こうして、いざ現実となると……。
(「ど、どんな顔すりゃいいんだ俺は!?」)
「……っと、あぁ……こんなとこでなにやってんだ?」
 振り絞るように、そんな声をかけるルガート。
 そんなルガートを気づいていないのか、それとも夜の闇でわからないのか、ユウリは構わず口を開いた。
「ま、待ってたのよ……ゴールに何も無いのでは申し訳無いかなと思って」

 顔が赤くなるのを懸命に堪えながら、ユウリはルガートの前に立った。
 どうやら、ルガートも戸惑っているようだ。
 その様子にユウリは少し、ほっとする。
「大丈夫、これは夢でも幻でもないわ。私がここにいる事も……」
 ユウリはそう言って、手に持っていたプレゼントを手渡した。
(「……そしてきっと、私の胸の内にあるこの想いも……」)

「あ……えっと……ありがとな……」
 照れたようなルガートの声。
 心の中では。
(「うわぁ……どうしよっ!? マジに嬉しいんだが……!!」)
 かなり喜んでいる様子。
 そして。

 ルガートはユウリの肩に手を置き。
 伏せ目がちなユウリの白い顔を覗き込み。
 ゆっくりと、青いユウリの瞳に吸い込まれるように、ルガートは……。

「わ、悪い……!!」
「あっ……」
 離れてしまうのが切ないのは、気のせい?
「あ、いや、その……と、とにかく、これ、ありがとなっ!!」
 隠れるようにルガートは、その場を走り去る。
「ルガート……」
 彼は、何をしようとしたのか、ユウリには分かっていた。
 それは、口付け。
 触れるはずだった唇に、指を当て、ユウリはルガートの背を見送る。
「ありがとう……」
 届く事の無い声は、闇の中で消えていった。


イラスト: 秋月えいる