「…君らしい味がする」 「…どーゆー意味ですか?」

● ワンダフル!? ソルティ&メルティチョコレート(シリアス編)

「待たせちまったな、すまない」
 2月14日、ランララ聖花祭の日。
 数々の試練を乗り越えて、女神の木の下に辿り着いたグウェンは、待っていたファリナにそう駆け寄った。
「いいえ、全然そんな事はありませんよ。それよりも……はい、これ」
 ファリナはゆっくりと首を振ると、持っていたバスケットを掲げる。
 中身はお弁当とチョコレート。勿論どちらも手作りだ。
「これをファリナが? 美味そうだな」
 有難くいただきますと、グヴェンは早速バスケットに手を伸ばす。
「……どうですか?」
「えーと、なんつーか……ファリナらしい味がする……」
 喜んでもらえるだろうかと様子を伺うファリナだが、彼の反応はちょっぴり微妙だ。その表情は、何かに戸惑っているようにも思える。
(「えーと、これ……塩……?」)
 その原因は味にあった。何とも摩訶不思議な味に戸惑いながら……グヴェンは、もしやファリナが、砂糖と塩を間違えたのではと推測する。
「私らしい……?」
 気合を入れた自信作だったというのに……と、ファリナはちょっぴり寂しそうな顔をしながら、どういう事だろうと首を傾げる。
「なんつーか………美しい薔薇には棘があるって感じ?」
「……それって、褒めてませんよね……?」
 例えるならば、と表現してみるグウェンだが、その返答にますますファリナは難しい顔になっていく。彼女がどんよりと、沈みそうになっていくのを見て、グヴェンは慌てて「そんな事は無い」と、再びバスケットの中に手を伸ばす。
 決して、食べられないほど不味いという訳ではないし……何よりファリナが作ってくれた物だから。もちろん全部食べるに決まっている。
(「ファリナが、オレの為だけに作って持って来てくれた……なんて、初めてだし。ファリナが頑張ってくれた……それだけで、マジ幸せだよ」)
 サンドイッチを頬張りながら、そうグウェンは笑みをこぼす。
(「……ホント、オレってファリナが好きだなぁ……」)
 心の底から、そう実感するグウェン。そんな彼の笑顔は、多少照れ気味なものになっている。
「グウェン……?」
「あ、いや……」
 彼の様子に、尋ねるように小首を傾げたファリナに、グウェンは何でもないと手を振りつつも、じっと彼女を見つめて。
「……作って来てくれて、本気で嬉しいんだ。有り難う……大好きだよ、ファリナ」
「う。あ、よ、喜んでいただけて何よりです。……私も好きですよ、貴方の事……」
 グウェンからの言葉に、ファリナも頬を赤くしながら、けれど確かにそう返す。

 互いに想いが繋がっていて。
 そんな、大切な人と一緒にいる事が出来て……。
 とても幸せだと感じながら、2人は昼下がりの時を一緒に過ごすのだった……。


イラスト: 秋月えいる