あ〜んをするのもされるのも男の浪漫

● STARDUST MEMORY

 フィアはどきどきしながら、星屑の丘にいた。
「レツヤ、私の試練を突破できたかな〜」
 事前に準備しておいた試練。
 果たしてレツヤは突破なるか?

「……………」
 もろも見事にフィアの試練にひっかかってしまったレツヤ。
 お陰で、着替える羽目になってしまった。
 しかも、気づけばもう夜になっている。
 不機嫌な表情を浮かべて、レツヤはフィアの元へやってきた。
「ねえ、私の試練どうだった?」
「……何でお前が俺に試練出してるんだよ……」
「あれ、もしかして引っかかっちゃった……?」
 機嫌を伺うように、フィアはレツヤを見る。
「お前は着かせたいのか、着かせたくないのか、どっちなんだよ」
 まあまあとなだめる様にフィアは、レツヤに大きなプレゼントを渡す。
「ちゃんとお菓子作ってきたから。あそこで食べよう?」
「……おう」

 草原に座った二人は、フィアの持ってきたプレゼントをさっそく開いた。
「フィア特製の甘さ控えめチョコケーキだよ」
 それは大きなチョコレートケーキ。
「はい、あーんして♪」
 フィアに言われるまま、レツヤは、一口大に切られたケーキをぱくんと食べた。
「どう? 美味しい?」
「うん、美味い!! 甘いものが苦手な俺でも美味いと思えるほど美味いぞ、これ!」
「良かった、うまくできて……」
 レツヤの言葉に、ほっと胸を撫で下ろすフィア。
「ほら、お前も食ってみろ」
 レツヤはそう言って、お返しにと一口大のケーキを、フィアの口に入れてやった。
「あっ、美味しい……」
 その意外な言葉に、レツヤはぎょっとした表情を浮かべる。
「美味しいって……もしかして、味見してなかったとか?」
「味見ならちゃんとしたもん」
「?」
 だったら、何故そのような事を言うのだろうか?
「だって2人で食べたほうが美味しく感じるんだもん」
 そんなフィアの言葉に、レツヤは心底、ほっとした。
「そうか……」

 と、フィアがそっとレツヤに寄り添う。
「レツヤ、大好きだよ」
 それはフィアからの告白。
「俺も好きだ、フィア」
 レツヤも同じ思いだったようだ。
 二人は幸せそうに微笑みあう。
「また来年もチョコケーキ作るから……。だからまた食べてくれる?」
「もちろん」
「約束……、だよ」
「ああ」
「これからもずっと、好きでいさせてね……」
 その言葉にレツヤは、もう一度、頷いた。
「安心しろ、ずっとずっと、この命が尽きるまでいさせてやる」

 星が瞬く頃。
 二人は寄り添い、綺麗な夜空と、闇に浮かび上がる町の明かりをずっと眺めていた。
 想いが通じたこの、幸せな日をその身に感じながら……。


イラスト: 金子卓生