伝説の花園ぴくにっく

● 伝説の花園ぴくにっく

 今日はランララ聖花祭。
 だから、飼っているウサギ達にはお留守番をさせて、2人だけで。
 お菓子をいっぱい持って、綺麗な花が咲き誇る花園へピクニックに出かけよう。

「わぁ、綺麗〜♪」
 一面に広がる花々を目にし、シトラは思わず声を上げると、そのまま隣に立つフェイルティヒに飛びついた。
「おっと。シトラったら、急に飛びついてきたら危ないですよ」
 そんな彼女の体をキャッチして、そのまま抱き上げるフェイルティヒ。2人の身長差から、シトラの足先が浮いてしまうけれど……でも、こんな風に抱っこされるのが、シトラは結構好きだった。
「っと、そうそう。せっかくピクニックに来たんだから食べよう?」
 地面に降りたシトラは、手作りのお菓子を詰め込んだバスケットを掲げながら誘いかけると、適当な場所に腰を下ろす。
 そして、中から取り出したクッキーを並べると……どきどきと、フェイルティヒの感想を伺う。
「今日のお菓子は、シトラが作ってきてくれたのですよね」
 フェイルティヒは指を伸ばすと、クッキーを口元に運ぶ。たまに、塩が固まっていたりするから気を付けて食べないと……なんて思いながら、一口かじってみたら。
「……おぉ、今日のはとても甘くて美味しいですよ♪」
 口の中に広がる味に、そう笑みと共に告げると、シトラはほっとしたような、嬉しそうな……そんな笑顔を滲ませる。
「あ、あとね、プレゼントもあるの」
 そうして更にシトラが取り出したのは、細長い1つの箱。蓋を空けたその中身は、フェイルティヒの為に色々なお店を巡って選んだ、一本のネクタイだ。
「絶対フェイルに似合うと思って……」
 しゅるりと彼の首にネクタイを回して結びながら、気に入ってくれたかな? と、やっぱりどきどきしながら見つめるシトラ。
 そんな彼女に、自分の好みの色をよく解っていますねと微笑みながら、「流石シトラです、有難う御座いますね」とフェイルティヒは礼を言う。
「それじゃ……ご褒美に、頭なでなでしてあげましょうねぇ」
 そう言って手を伸ばすと、彼女の髪を優しげに撫でるフェイルティヒ。その感触はシトラにとって、今日の為に頑張った自分へのご褒美かのようにも思えて……とても、心地良い。
 けれど……。
「……なんか、視線感じるなぁ」
 ふと、誰かに見られているような気がして、辺りに目をやるシトラ。同じように、何か嫌な気配がするような気がすると、周囲を見回したフェイルティヒと2人、やがて同時に見つけたのは。
 ぴょこん、ぴょこりと、長い耳を揺らしているウサギたち。
「もしかして、とは思いましたが……」
「お菓子につられて、ついて来ちゃったのかな?」
 置いて来たはずのウサギ達がいる事に、驚く2人だったけれど。でもまぁ、来てしまったものは仕方ないかと、互いに顔を見合わせて笑うのだった。


イラスト: こうき くう