待ち合わせて・・・・

● 告げる想い

 楽しいお祭り。
 今回のような恋人たちが集うお祭りには、幾度か参加しているキリナ。
「何だか緊張してきちゃうね……」
 恋人であるアンディよりも、早く女神の木の下に来たキリナは、そわそわと辺りを見渡した。
 どうやら、アンディはまだ来ないようだ。
「早く来てくれないかな……」
 どきどきそわそわ。
 キリナは落ち着かない様子で、アンディが来るのを待っていた。

「キリナさーんっ!」
 ぱたぱたと息を弾ませながら、アンディはやってきた。
 頭には、可愛らしいウサギの耳の形をしたリボンが揺れている。
 愛らしい格好をしている為、よく女の子に間違われるが……本当は男の子だったりする。
「アンディ君」
 キリナは嬉しそうに顔を上げた。
 アンディもキリナの姿を見つけて、嬉しそうにやってくる。
 が、しかし、次の瞬間には、二人は同時に頭を下げていた。
「「ごめんなさい……」」
 先に顔をあげたのは、アンディ。
「ごめんなさいです……遅れちゃいました……」
 半泣きで瞳を潤ませながら、キリナを見る。
「謝らないで。謝るのは私の方だよ……」
 そう前置きしてキリナもすまなそうに告げる。
「私、何も用意できなかった……」
 本来ならば、お菓子を用意するのはキリナだろう。
 渡したかったお菓子。
 けれど、それができなかったのが、キリナにとって辛い事でもあった。
「悲しまないで……その、僕も遅れちゃったから、おあいこだよ。それに……お菓子なら僕、持ってきたんだ。……キリナさん、貰ってくれる?」
 そう言って、キリナに微笑みながら、そっと持ってきたお菓子を手渡す。
「ありがとうね……。本当に、ありがとう」
 アンディからのプレゼントを笑顔で受け取り、抱きしめた。
 そして、アンディを抱きしめる。
 キリナはありがとうの感謝を込めて、アンディの頭を優しくなでた。
 アンディはキリナに頭をなでられて、気持ち良さそうに瞳を細めていた。

 しばらくして、そっとアンディはキリナから離れた。
「アンディ君?」
 アンディは深呼吸して、緊張した面持ちでキリナを見る。
「僕アンディ・リーランスは、キリナ・アリオンの事を愛しています。誰よりも……いつまでも……」
 それはアンディからの愛の告白。
「うん、私も大好きだよ」
 キリナはそう告げる。素敵な恋人を持てて幸せだと感じながら……。
「わ、わわ……ほ、本当!?」
「うん」
「ど、どうしよう、僕、う、嬉しいけど……な、なんだか照れちゃうよ……」
 そんな風に慌てながら照れるアンディ。
 その姿を見ていると、キリナも恥ずかしく感じてしまう。
「あ、ねえアンディ君。一緒にたべよっか?」
「え、あ……うん!」
 こうして、二人だけのデートが始まる。
 両思いになった、記念すべき素敵なデートが……。


イラスト: 秋月えいる