幸せな時間

● 二人の約束

「いいお天気ですね」
 サナはアモウと手を繋ぎながら歩くと、人気の無い花園を訪れていた。
 射し込む日差しは柔らかく、頬を撫でる風はとても心地良い。
「気持ちのいい場所ですね。ここでひと休みしませんか」
「ああ、そうしようか」
 サナの言葉に頷いて、アモウは草の上に腰を下ろす。
 彼女と肩を並べながら過ごす、ゆったりとした時間……愛する女性が側にいる幸せをかみ締めながらも、アモウは、もっと側で彼女を感じたいと――彼女に、甘えてみたいと、そう欲を感じて。
「サナ、膝枕して欲しいな?」
「……はい」
 笑顔で頼むアモウの言葉に、サナは思わず笑みを零しながら頷き返す。膝に乗る重みは、決して苦痛ではなく……愛する人の側に居られる事の喜びを感じながら、サナはアモウの顔を覗き込みながら微笑む。
「サナ……」
 そんな彼女の表情を見上げながら、アモウは思う。
 ――この幸せを、永遠に自分の物にしたい。
 自分はこんなにも彼女を必要としている。……愛している。
 恋人同士のままでも幸せかもしれない。でも……もっと、もっと。その先が――欲しい。
 限り有る時間の全てを彼女の為に。彼女と共にありたいと、願いやまない。

 だから。

「俺と――結婚しよう?」
 愛しそうに彼女の頬に触れて、さっきと同じような笑顔でする『お願い』。
 その内容にサナは目を丸くして、思わず言葉を失ってしまったけれど……でも、いつまでもずっと彼の側にいたいと、限り有る時間の全てを彼と共に過ごしたいと、そう願う――気持ちは、彼と同じだから。
「はい……私を、今よりもっと幸せにしてください」
 頬に触れた手に自らの手を重ねながら、こくりと頷き返すサナ。彼女の返事に、アモウは幸せそうに「ありがとう」と微笑む。
「……あぁ、もっともっと幸せにする。いや、俺と一緒に幸せになろう。お前が幸せなら、俺も幸せになれるから。誰よりも深く愛してる、俺の……サナ……」
 アモウはサナを抱き寄せながら、その耳元に囁いて彼女に誓う。
 甘く優しい、約束の口付けと共に……。


イラスト: 綾乃ゆうこ