Sweet Happy Day

● 甘いひととき

 彼とやってきたのは、春の花が咲き乱れる美しい花園。
 空が綺麗で。お日さまの光が暖かくて。優しい風が気持ちよくて。
 すぐそばに、大好きな優しい笑顔があって。
 こんなに幸せな時間を下さったランララの女神様に、心から感謝します。

 今、サナの目の前には大切な彼……アモウがいる。
 しかも、サナがプレゼントした手編みのセーターを着込んで。
 これほど嬉しい事があるだろうか?
「アモウさんの為に頑張っちゃいました。お口に合うといいのですけれど」
 朝露の花園で、サナは自分で作ったガトーショコラをアモウに差し出した。
 リドルから教えてもらった本格派なガトーショコラ。クーベルチュールをふんだんに使って焼き上げられている。
「これは美味しそうだ。本当にありがとう、サナ。さっそく一緒に頂こう」
 自分の為に作ってくれたガトーショコラ。
 俺の為に一生懸命作ってくれた事が、幸せでくすぐったい。
 アモウはそう思っていた。
 いや、それだけではない。
「あーん」
 アモウは思いっきり微笑み、口を開けてそのときを待つ。
「あ、アモウさん……」
 サナは少し驚きながら、照れながらもガトーショコラを一口大に切った。
「アモウさん、はい、あーん」
 アモウの口の中で、甘いガトーショコラが溶けていく……。
「……おいしいですか?」
「美味しい……とても」
 ゆっくりと味わいながら、アモウはそう答えた。
「あ、待ってください、アモウさん」
 そう言ってサナはアモウの頬についているガトーショコラを取ってやる。
「あ、ありがとう」
 アモウは恥ずかしそうに頬を染めなら俯いた。
「はい、サナも」
 今度はお返しにとアモウが一口大のガトーショコラをサナに差し出す。
「あ、ありがとうございます……」
 幸せそうに微笑みながら、アモウからガトーショコラを貰う。
「サナ……ありがとうな……」
 アモウは名を呼び抱き寄せ、彼女を慈しむような口付けをした。  甘く感じるのはガトーショコラを食べたから?
 それとも……。
 いつにも増して甘く柔らかな彼女の唇に、アモウは思わず我を忘れて浸っていた……。

 長いキスの後。
「いつまでも、ずっとずっと、私のそばにいてくださいね」
 アモウに抱きしめられながら、サナはそう告げる。
「ずっと傍にいる。サナが望む限り、いつまでも……」
 微笑みながら、アモウはしっかりとそう応えた。
 二人だけの幸せな時間。
 いつまでいつまでも続くようにと、二人は女神に願うのであった……。


イラスト: 橘平