ランララの夜に

● 眠れる夜の姫

 ゆっくりと陽が落ちてゆく。
 かわりに現れるのは、美しい星々。
 まるで、星という名の宝石を夜空に撒き散らしたように。

「いやー、あの試練には参ったな」
 コウショウが隣にいるクールに話しかける。
「うん、そうだね……」
「ほら、例のほっかむり軍団とか、シットーって叫ぶ奴等とか出てきてさ……まあ、何だかんだいって楽しかったけどな」
「うん」
 もう、陽は見えない。
 いよいよ夜が来たのだ。
 二人だけの夜が……。

「でな、クール……クール?」
 やっとそこで、コウショウは気づいた。
 クールが眠そうに……というか、もう既に半分くらい夢の中にいる事に。
「眠そうだな。しょうがない、ほら……」
「え? ええ?」
 コウショウはひょいっとクールを抱き上げた。
「で、でも、重くない?」
「平気平気。これくらいどうって事ないって」
 コウショウに、にこやかに笑われてしまい、クールは何も言えなくなってしまった。
 と、クールの瞳に月が映る。
 闇に染まる夜空に、大きく浮かぶ月。
「あ、見てコウショウ! 月が出てる……二人の通り名にお揃いの月だね」
「ああ……綺麗な月だな……」
 クールはうつらうつらしながらも、コウショウに抱きつく。
「大好きだよコウショウ、ずーっと大事なお友達でいようね♪」
「ああ、俺も好きだぜ、クール」
 にっと微笑み返すコウショウ。
「……って、もう寝てる……」
 思わず苦笑してしまう。
「まあいいや、とにかく、この眠り姫を家まで届けないとな」
 それとも、ちょっといたずらでも……。
「いやいや、今日は特別な日だからな」
 だから、今日はこれくらい。
 眠るクールの頬にキスをして、コウショウはゆっくりと星屑の丘を後にしたのであった。


イラスト: 芳田ひふみ