小春日和

● 小春日和 〜内緒のお茶会〜

 誰にも内緒の二人だけのお茶会。
 きっと、今日は素敵な1日になるだろう。

「良い天気ですね」
 イツキは、ふと、空を見上げて呟いた。
「ごめんね、遅くなっちゃった?」
 息を弾ませやってきたのは、リュフィリクト。
 その手にはお菓子の入ったバスケットがある。
「いいえ、私も先ほど、準備が整った所ですから。どうぞ、座ってください。始めましょう」
 イツキに促され、リュフィリクトは用意された席に座る。
 リュフィリクトはすぐさま自分の持ってきたお菓子をテーブルに広げた。
「今日はもの凄く天気が良かったから、頑張ってタルトを作ってみたんだ♪ ……ちょっと不恰好になっちゃったけど、味は大丈夫だと思うから……」
 少し不安げにイツキを見る。
「ありがとうございます。ではさっそく……」
 そう言ってイツキは一切れ、口に入れた。
「美味しい……美味しいですよ、リュフィさん」
「よかった、僕もイツキさんに喜んでもらえて、とっても嬉しいよ♪」
 二人は目を合わせて、笑い出した。

「えーいっ!!」
 リュフィリクトの周りに沢山の花びらが舞う。
 タルトをいくつか食べ終えた後、リュフィリクトは、花園に落ちていた花びらを集めて、両手で撒いて遊んでいる。
 そんな無邪気な姿を見せるリュフィリクトの様子を、イツキは幸せそうに見つめていた。
(「穏やかな日差しの中、咲き乱れる花々の中で無邪気に笑い、色とりどりの花びらと戯れるリュフィさんを、いつまでもいつまでも見ていられたら……」)
 そう思っていたのもつかの間。
「えへへ♪ 花びら塗れになっちゃった」
 そういって、リュフィリクトが戻ってきた。
「リュフィさん」
 イツキは少し照れくさそうに、けれど確かな声でリュフィリクトに告げた。
「大好き、ですよ。ずっとずっと、共に歩んで行きましょうね……リュフィさん……あなたを心から……愛しています」
「僕もイツキさん、大好き!」
(「ずっとずっと大好きでいてね?」)
 言葉だけでは足りないリュフィリクトの熱い想いは、彼の心の中にも響く。
「ずっと一緒にいようね?」
(「ずっとずっと、一緒だよ?」)
 その気持ちは、溢れるように。
「今日の事、忘れたらヤだよ?」
(「どんなに時間が経っても、俺はずーっと覚えてるんだ♪」)
 その想いはイツキにも伝わる。
「安心してください。決して、今日のこのお茶会の事を忘れたりなどはしませんよ」
 そのイツキの言葉にリュフィリクトはとびきりの笑顔を向けた。
「イツキさん、大好き!」
 抱きついてきたリュフィリクトを、イツキは優しく受け止めた。


イラスト: 天神うめまる