腕の中の宝石、空の上の宝石

● 薔薇色に染まるのは

 今は夜。
 日も落ち、彼らを撫でていく風も少し寒く感じる。
 いや、この二人には、そんな寒さも感じられないだろう。
 何故なら、暖かな白いマフラーがあるのだから。

 長くて白いマフラーを、互いの首に巻きつけているのは、カイルとハクカ。
 カイルもハクカも何だか嬉しそうだ。
 ……と言いたいところだが、ちょっと違うようだ。
「綺麗だな、星……」
 少し緊張したような声でカイルが声を出した。
「ええ、とっても綺麗……」
 降るような星が空を彩る、美しい光景にハクカは目を奪われていく。
「手、寒く無いか……?」
 と、優しく声がかけられる。ハクカの手には、カイルの暖かい手が添えられた。
「え、あ、……だ、大丈夫……」
 どきまぎしながらも答えるハクカ。
「そうか。寒くなったら遠慮なく言ってくれよ……」
 そのカイルの言葉に、ハクカはただ、頷くだけであった。
(「……あぅ〜。もっと色んな事話さなきゃって思ったのに……私もバカぁ……」)
 ロマンチックな夜は、二人っきりの夜を一層、緊張させるようだ。
 ハクカの胸の鼓動は収まる事を知らない。
「……ほんとに綺麗だよな。……漆黒の空に抱かれて輝く星。まるで、今の私達みたいだと、思わないか……」
 ハクカの長い髪を撫でながら、カイルはそう続ける。
「カイル……」
 カイルに自分の髪を撫でられ、恥ずかしそうに身を縮こまってしまうハクカ。
「いや、ハクカの薔薇は、この頬みたいに赤くはならないのかなぁ……と、そう考えていたんだ」
 ごまかすようにそういったカイルの頬は、赤く火照っていた。
 そして、カイルはそっと、ハクカの頬にキスをする。
 淡く短いキス……。
 それはハクカの頬を火照らせるのに充分なものであった。
「今宵、この星空に誓うよ……。一生ハクカを愛し、同盟一、幸せな妻にしてみせる、と、な……」
 そのカイルの言葉にハクカは、嬉しそうに微笑む。
 いや、それだけではない。
「あ、ありがとう、カイル……」
 ハクカもお返しにキスをした。
 二人は互いに恥ずかしそうに頬を火照らせながら。
「……ね、カイル……。来年も、再来年も、ず〜〜っと……二人で居ようね……♪」
「ああ」
 抱きつくハクカをしっかり受け止め、カイルもまた、微笑むのであった。


イラスト: 山本佳織