ランララ聖花祭〜互いを想う気持ちはこれからも〜

● ランララ聖花祭〜星空の下、お互いの気持ち〜

 スレイツとカトンはランララ聖花祭を充分に満喫した。
 恋人と一緒に過ごした一日は、何もかもが輝いて見えた。
「まさかこんな日が来るなんて、夢にも思ってなかったけど……」
 くすっと笑ってカトンが言う。
 スレイツにとっても、今日は初めて恋人と過ごすランララ聖花祭だ。
 綺麗な花々が咲き誇る園を歩き、可愛らしい小鳥が飛ぶ空を見上げ、最後に丘へ遣って来た恋人たちは、今も仲良く手を繋ぎ続けていた。
 その名が示す通り、星屑の丘からは星が良く見える。
 世界を包みこむ夜の中で輝き続ける真っ白な満天の星。
 二人で待ち合わせをして繰り出したランララが、夢のように遠く思えた。
 今日あった出来事を思い出すたび、カトンは顔を赤らめる。恥ずかしいこと、照れることがたくさんあった。驚いたり恥ずかしいことがたくさんあったよね、とスレイツも笑う。
「やっぱり一緒に過ごせたことが嬉しかったな〜♪」
「俺が一番思い出に残ってるのは……って、こんなこと言えるか!」
 彼の嬉しい言葉に思わずつられて口を開いたカトンが、自分の想いに照れて真っ赤になった。
 スレイツはそんな彼女の様子を可愛らしいと思いながら続ける。
「でも、一番インパクトが強かったのは、カトンがケーキを作って来てくれたことかな」
 お菓子作りと言うか料理が出来たなんて、と思いを馳せるスレイツ。
 カトンは拗ねたように唇を尖らせた。
「……そんなに意外か?」
 スレイツは咳払いして、ケーキは美味しかったし、貰えたことが嬉しかったと誤魔化した。
 納得いかないところもあるが、彼が喜んでケーキを食べてくれたのは本当のことだから、カトンも満足げに表情を緩める。喜んでもらえたなら、プレゼントした甲斐があったと言うもの。

 それからしばらく、二人は取り留めの無い話を続けていたが、スレイツが星空に見入っている間にカトンは寝入ってしまっていた。
 たくさん歩いて遊び疲れたカトンは、こうなってしまうと絶対に起きない。
 スレイツは仕方ないなと苦笑して、ふぅ、と息を吐いた。
 肩の力を抜いて星空を見上げ、小さく呟く。
「辛くても悲しくてもカトンがいるから、僕は前に進めるんだろうなぁ……」
 カトンは夢うつつの中でスレイツの声を聞いたような気がした。
 来年のランララもきっと、照れてしまうようなことばかりなのだろう。
(「まあ、いっか……好きだし」)」
 声には出さず、心の中で呟いた。
 恋人の肩に寄りかかり、カトンは幸せな夢を見る。



イラスト: 上條建