邪帝サマと戯れて…

● 微睡み見るは甘き夢現

「ふむ、俺がこんな場所に来る事になるたぁな」
「僕もシェリヤとこうして、二人で出かけるなんて事、夢にも思わなかったよ」
 クリストはイリヤ……いや、ここではシェリヤと呼ばせて貰おう。
 二人は、寄り添いながら、星屑の丘へと向かっていた。
 と、クリストがそっとシェリヤの腕を組んできた。
「ン? 寒いのか?」
「一緒にいる方が、暖かいから……」
「フ……暖かいか、違いない」
 シェリヤの優しい声にクリストは微笑む。
「あ、あそこの木蔭、いいんじゃない?」
 クリストが指し示した場所は、休憩するのに丁度良い場所であった。
 しかも人気が無いのか、人気も少ない。
 二人はそのまま、見つけた木蔭の側まで移動し、座り込んだ。

 今、二人はごろんと草原の上に横たわっていた。
「………夢、みたいだったよ」
 そういって、一緒にランララ聖花祭を過ごしたときの事を話すクリスト。
 シェリヤはそれを黙って聞いていた。
 いや、これはむしろ。
「……あれ、シェリヤ?」
 気が付けばシェリヤは眠っていた。
「眠って……しまったのかな?」
 クリストは口を閉じ、シェリヤを眺める。
(「それにしても、シェリヤって綺麗な顔してる……なぁ。こうしているだけで見惚れそうだよー」)
 そう、幸せそうにじっとシェリヤを眺めていると。
「―――…どうした? 目も逸らさずに。見惚れたか?」
 どうやら、寝たふりをしていたらしい。クククと相手をからかう様にしてシェリヤは笑う。
「っつわ、起きていたのかい? ヤだなぁ、恥ずかしい」
 そして、クリストは頬を赤く染めながら、大切な彼の名を呼んだ。
「シェリヤ」
「ン?」
「君といるこの時間は、僕は君のモノだよ」
 心の中の一番の座は戯れでも譲れないけれど。
「素敵な邪帝サマ。本当に、心からアイシテルよ」
 そう、クリストはシェリヤに大切な言葉を告げた。
 シェリヤは笑みを浮かべたまま、クリストの顔を自分の顔へと近づけさせる。
「2人で居るこの瞬間……お前は俺のモノだ」
 キスするかと思う至近距離で、シェリヤはクリストの耳元でそう囁いた。
 先ほどの相手をからかう様な笑みを浮かべて。

 そして、別れの時が来る。
「楽しい時間を有難う? エルフ様、……また会おう」
「それはこっちの台詞だよ。シェリヤ」
 次に会うのは、いつだろう?
 それを楽しみに二人は、ゆっくりと自分の部屋へと戻っていくのであった。


イラスト: 上條建