星屑の丘―空を眺めて―

● 今宵、星の見える丘で

「わぁ、綺麗な星……」
 フェレーは、夜空に浮かぶ沢山の星々を眺めながら、嬉しそうに微笑んでいる。
 ここは星屑の丘。
 フェレーとリスリムは、この丘で星を眺めていた。
 降るような星々が、二人を祝福するかのように瞬いている。
「ほら、あれが有名な星座で……」
「せいざ?」
 リスリムの説明する横でフェレーは首をかしげていた。
「そう、星座だよ。星をつなげていくと、絵というか、ある形になるんだ。いい? あそことあそこの星、それとあっちの星、最後に右の方にある星を繋げてみて。なにかの形にならない?」
「え、ええ? あ、ああ、本当なーん!」
 リスリムに教えられて、フェレーはひとつの星座を見つけた。
「それと、あの赤く光る星には名前が付いているんだよ。確か名前は……」
 そんな風にリスリムは、星について何も知らないフェレーにいろいろと教えてあげていた。
(「星にも名前が付いているんだ」)
 フェレーは驚きながら、空を見上げる。
 吸い込まれるような広い空。
 その空に浮かぶ星に名前が付いているなんて。
 そんな事を教えてくれるリスリム。
 フェレーの足りないところを埋めてくれる存在であった。
(「だからウチはリスリムが大好きで、ずっと一緒にいて、一緒に生きたい……」)
 嬉しそうにフェレーはリスリムを見た。

「……実際、こんなにしっかりと、星を見るのは初めてで……って、あ、今、流れ星が!」
 リスリムが照れながら叫ぶ。
 リスリムの指差した先にあったのは、流れていく星がひとつ。
「流れ星なーんっ!」
 しっぽをぱたぱたと振りながら、フェレーは楽しげに星を見ていた。

 さっきのリスリムの言葉は、照れ隠し。
 伝えたい言葉を伝えようにもなかなかいえないから。
 ちょっと恥ずかしい気持ちもある。
 でも、言わなければ伝わらない気持ちもあるのだ。
 リスリムは勇気を出して、声をかける。
「あのね……フェレー……」
「なーん?」
「……一緒に居ると、とても楽しくて」
 なかなか視線が合わせられないリスリム。
「……折角、生きてるんだし……人を好きになったって……罰は当たらないよね? 出会えてよかったって、心から思う……」
 だが、言葉を告げるにつれて、その恥ずかしさは徐々に薄れていく。
 最後には、フェレーの瞳をしっかりと見つめて。
「大好きだよ、フェレー。……本当、好き……」
 リスリムにそう告白されて、フェレーは恥ずかしそうに、けれど嬉しそうに微笑んだ。
「ウチは……ウチはね、大切なひとの笑顔をみるのが、何よりも大好きなーん」
 頬を僅かに赤く染めながら、フェレーは続ける。
「だから……だからね、これからもずっとリスリムの隣で、リスリムの笑顔を見ていたいって……思うのですよ」
 最後に二人は、そっと互いの手を繋いだ。
 二人、同じ事を考えながら、顔を見合わせ微笑む。
 ちょっぴり照れながら。

 出会えた事に、今を一緒に生きていることに感謝しながら……。


イラスト: オウヤカズキ