おひとつどーぞっ!

● 親愛なる…

 ここは女神ランララの木の下。
「ルーク〜!」
 そう声をかけるのは、ヤマト。
 ヤマトの両手には、いっぱいのお菓子が抱えられている。
「ヤマト?」
 ヤマトに声を掛けられた、ルクレツィアは首をかしげながら振り向いた。
 ルクレツィアは、ただ単に約束の木周辺まで散歩していただけである。
「皆に貰ったんだーっ」
 楽しそうに、手の中のお菓子を見せるヤマト。
「凄いね、これ」
 感心した面持ちで、両手いっぱいのお菓子を見つめるルクレツィア。
(「こんなにたくさんのお菓子……全部食べれるのかな?」)
 思わず、心の中で呟いてしまう。
「へへ、一緒に食べるか?」
 ヤマトは、腕の中にあるお菓子から一つを取って、ルクレツィアに差し出した。
「これはこれは……どーもありがとうなぁ。さっそく、いただき……」
 受け取り、食べようとしたが……その手を止めた。
「……まずは座ろうか?」
 ラクでしょ?と微笑むルクレツィアにヤマトは嬉しそうに頷いた。

「ルーク、このお菓子はね……」
 一つ一つ貰った相手を説明しては、ぱくりぱくりと食べて行く。
 ルクレツィアも先ほど渡されたお菓子を口に入れた。
「美味しい」
 ちょっと驚くルクレツィアに。
「なっ? おいしいだろー?」
 得意げな笑みを見せるヤマト。
「あ、そういえば、これってヤマトのもらい物だよね?」
 思い出して、しまったという顔を浮かべるルクレツィア。
 ヤマトは、お菓子の中から一枚のチョコレートを取り出し、ぱきっと半分に割った。
「ルークと食べた方がおいしいから、いいんだっ♪」
 大丈夫だよと言わんばかりの笑顔で、ヤマトは半分に割ったチョコレートを差し出した。
「そっか……」
 ルクレツィアも嬉しそうに微笑み返した。

 気が付けばヤマトは、うとうと眠りに落ちてゆく。
 ルクレツィアの肩に頭を預けて、気持ち良さそうにすやすやと。
 そんなヤマトを見つめながら、ルクレツィアは、着ていた外套をそっとヤマトにかけてやった。
「ヤマトのお陰で、毎日が楽しいよ……。
       ――ありがとう、小さな可愛いご友人」
 そう囁いて。
「んー……おれもー……」
 ヤマトの頷きに驚きながらも、ルクレツィアは思わず笑みを浮かべた。

 幸せな午後。
 いつの間にか、二人は眠っている。
 傍らには、甘いお菓子の欠片が落ちていた。


イラスト: 高屋