プレゼントは『アオジルケーキ』に愛を込めて♪
● Aojiru Cake For You.
「今日はランララの日なんすよ」
リョクは膝の上にわんこのロバートを乗せながら、そんな風に語りだした。
「本来はお菓子を奉納する日らしいんすけど、やっぱり恋人同士のイベントっすかね〜」
そんなリョクにも大切な人がいる。せっかくだから、彼女と出かけようかと考えたリョクは、支度を済ませると、シャルロットを誘う。
「え、ええ! そうしましょう」
頷いたシャルロットは、小さなバスケットを手に外へ出た。
この日のために、数日前からあれこれ調べ、今朝とても早起きして作った……大切なケーキが入った箱を持って。
「華やかでいいっすね〜」
朝露の花園を訪れた二人は、綺麗に咲き誇る花々を眺めながら、花園の中をゆったりと歩く。
少し離れた場所には、どこか初々しい様子のカップル達。
まるで、以前の自分達を思い出すようだと、リョクはぼんやり思う。
「……シャルに初めて会ったのは、一年くらい前っすね」
あの時は、ただ綺麗な人だと思っていた。
けれどシャルロットは、おっちょこちょいで、悪戯好きで……いつの間にか、リョクはそんな彼女を好きになっていて。
(「それがっす、今は、俺の奥さんっす」)
隣のシャルロットを見ながら、少し照れた顔でリョクは思う。
プロポーズをした、あの日のこと。ものすごく勇気が必要だった、あの瞬間……それを越えて、今彼女と一緒にここにいるのだという事を、感慨深げに思いながら。
「リョクさん、これ……」
少し休もうかと腰を下ろしたところで、シャルロットはバスケットの蓋を開けた。
中には、綺麗にラッピングしたケーキが入った箱がある。
「あ、あの、頑張りました……よよよ、よろしくお願いしますっ?」
真っ赤になりながら渡すシャルロットの声は、すっかりうわずってしまっている。慌てているからなのか、その言葉はどこか混乱中だ。
「俺にっすか? 凄く嬉しいっす!」
けれどリョクからしてみれは、それはこの上ない喜びで……本当に本当に嬉しそうな顔で、リョクは箱を開けると、その中身にまた声を上げる。
「アオジルケーキっすか! 好みを一番よく知ってるのは、やっぱりシャルっすね♪」
箱の中に入っていたのは、鮮明な緑色のケーキ。
リョクの好きなアオジルを使ったケーキである。
「いっただっきまーす♪」
あむっ、と早速ケーキを食べ始めると、美味いっす〜と笑みをこぼすリョクの様子に、シャルロットは気に入って貰えて良かったと、ホッとした顔をしながら、もふもふっと彼の羽に顔を埋める。
……近くを通るカップルが、アオジルケーキの毒々しい外見に、冷や汗を浮かべていたりしているようだが、気にしない気にしない。
「……日が傾いて来ましたね」
もうじき夕暮れでしょうか、と呟いて、シャルロットはケーキを食べ終えたリョクを見る。
「そろそろ、帰りましょうか?」
「そうっすね。……転ぶといけないっすね、手……繋いで帰るっすか?」
問いかけたシャルロットに、リョクは頷くと、照れながらも手を差し伸べる。
「はい……」
はにかみながら、その手を掴み、シャルロットはゆっくりと歩き出す。
しっかりと手を繋ぎ、寄り添いながら……2人は我が家へと向かって歩いていった。
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漣の記憶・シャルロット(a19863)
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緑の記憶・リョク(a21145)
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イラスト: bulffman