黒と白のわんこ〜ビタースイート＆フルーツ〜

● 黒と白のわんこ〜ビタースイート＆フルーツ〜

　去年から、ずっと沈んでいる。
　そう気づいたのは、いつの事だろう？
　ダストは、その沈みがちなウィンディアの様子を見て、一大決心した。
「ウィンディアさん、ランララ聖花祭に行こうなのじゃ！」

「……ランララの聖花祭の日には、いろいろとあると聞いておったが……あんなものがあるとはおもわんかったんじゃ……」
　額の汗を拭い、ダストは目的地にたどり着いた。
　どうやら、まだウィンディアは来ていない様子。
「さあ、準備を始めるのじゃ！」
　ぱたぱたとダストはテーブルを用意し、お菓子の準備を始めたのであった。

　しばらくして……。
「遅くなってすみませんですわ〜」
　白わんこの着ぐるみを着た、ウィンディアがやってきた。
　ちなみにダストは、黒わんこの着ぐるみを着ている。
「お、ウィンディアさん。こっちじゃ」
　ダストは笑顔で、ウィンディアを迎える。
　テーブルの上には、美味しそうなチョコレートフォンデュが用意されていた。
「まあ、美味しそうですわ〜」
　席に着いたウィンディアは嬉しそうにチョコレートフォンデュを見つめている。
「ささ、ウィンディアさん。食べたいものを言うのじゃ。わしがチョコをつけてあげるのじゃ♪」
「そうですわね……では、苺をお願いいたしますわ」
「了解なのじゃ！」
　さくっと串に苺を突き刺し、チョコレートが入っている容器に入れた。
　ゆっくりとかき回すように、苺にチョコレートを纏わせる。
「あーんなのじゃ」
「あら、そこまでしていただかなくても……」
「いいから、いいから。あーんなのじゃ。あっついから気をつけるのじゃぞ」
「はい、ありがとうございます」
　そういって、ウィンディアはあーんと口を開いた。
　その中に先ほどの苺をそっと入れるダスト。
「はふはふ………美味しいですわ〜」
　口をもごもごさせながら、にっこりと微笑む。
「ウィンディアさんは、笑顔でお菓子を食べておるの姿がよいと思うのじゃ」
　ウィンディアのその微笑を見ながら、ダストはそう思った。
　そして、同時に湧き上がる不思議な感覚。
　これは一体……？

　数分後。
　二人は仲良くチョコレートフォンデュを食べていた。
　もう、フルーツは半分くらい無くなっている。
「ん？　ウィンディアさん、頬にチョコが……」
「あ、ありがとうございます」
　ハンカチでそっと、ダストは頬についていたチョコを拭い取る。
　………じーーー。
「な、何じゃ？」
　ウィンディアに見つめられ、たじたじとしてしまうダスト。
「ダストさまのフルーツも美味しそうですわ……」
　そういって、さっそく交換してしまう。
　それだけではない。
「あら？　チョコがこんなところに〜」
　ダストの頬についていたチョコを指ですくうと、そのままぺろりと嘗めてしまった。
　突然の行動にダストは、頭が真っ白だ。
「う、ウィンディアさん！？」
「チョコレートって、大好きですわ〜。甘くて美味しいですから〜」
　そう、満面の笑みを浮かべられてしまうと、何も言えなくなってしまう。

　だが……こうして、ウィンディアの笑顔が見れただけでも、充分かもしれない。
「ダストさま、ありがと〜」
　そういうウィンディアの感謝の言葉が、ダストにはくすぐったく感じられたのであった。


イラスト： コシカワグウ