君としっぽとちょこクッキー
● 君としっぽとちょこクッキー
気持ちの良い天気。
サガは、うとうとしながらも、女神の木の下で彼を待っていた。
「……ルナしゃん、こーなーいー……」
退屈そうに伸びをするサガ。
「……また、来なかったら……さびしいー……」
前回のデートですっぽかされた経験を持つサガ。
そんな寂しい思いはあれっきりにしたい。
「よし! ルナしゃん探しに行くなぁ〜ん♪ きっとどこかにいるはずなぁ〜ん!」
サガはにこっと微笑むと、てくてくと女神の木の下から移動を開始したのであった。
「あ、いたなぁ〜ん♪」
そして、サガはやっと彼……ルナシアをみつけた。
何故かロンリーウルフが集う、寂しげな集団の中で。
「ルナしゃん、やっと見つけたなぁ〜ん! 一緒に行くなぁ〜ん♪」
「え? サガ?」
サガはルナシアの腕に抱きつくと、そのままぐいぐいと引っ張りながら、その場を後にした。
「ごめん。悪かったよ」
女神の木の下へと向かう途中。
相変わらずの無表情のまま、ルナシアはそうサガに告げた。
顔が無表情なのは、いつものこと。
ルナシアのしっぽは、ふにゃりとしていた。
彼の気持ちを判断するときは、顔ではなく、しっぽを見る方が早い。
「今度から気をつけてなぁ〜んね」
二人はゆっくりと女神の木の下にたどり着いた。
女神の木の下で、二人は楽しそうに語らう。
「サガにOK貰ったのが、ザンギャバス包囲網の時だから……ああ、もう結構経つんだよな。早いもんだね」
「そうなぁ〜んね。ちょっと驚きだなぁ〜ん」
時々笑いながら(とはいっても笑うのはサガのみだったが)、二人はいろいろな事を話した。
と、サガはある事を思い出した。
「そだ……ちょこクッキー、あげなきゃなぁ〜ん」
「ん? どうかしたのか、サガ?」
どうやら、サガの呟きは、ルナシアには届かなかったようだ。
サガはルナシアの腕から離れる。
その手にルナシアへのプレゼントを持って。
「あのね……ボク、こないだクッキー作ったのなぁ〜ん。だから……ルナしゃんに、あげるー」
紅いリボンで結ばれた包み。ルナシアがその包みをあけると、そこには少し歪な形のチョコクッキーが入っていた。
(「ふにゅ…ルナしゃん喜んで、くれたかなぁ〜ん…?」)
静かなルナシアの顔を不安そうに見上げる。
と、ふわりとルナシアの手がさわさわとサガの頭を撫でた。
「あー……去年はこういう光景、全く想像してなかったんだけどな。隣にサガが居てくれると……少し、くすぐったいような気持ちになる」
やはり表情は変わらないが、ルナシアの声は少し恥ずかしそうな響きがあった。そして。
「ありがとう」
ルナシアは小さくそう囁いた。
(「ボク、あんましお料理とか上手じゃなかったから……ちょっと心配だったんだけど……」)
ふと、サガはルナシアの尻尾を見た。
嬉しそうにぱたぱたと尻尾が揺れている。
サガはそれを見てにっこり微笑んだ。
「ルナしゃん、だいすきなぁ〜ん♪」
そういってサガは、ぎゅっとルナシアに抱きついた。
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残響の・ルナシア(a20060)
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輝く銀の流れ星・サガ(a16027)
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イラスト: いろは楓