ランララ祭〜満天の星空の下で〜

● 甘いお菓子に想いをのせて

「試練、楽しかったー♪」
 ヤツキが楽しげに腕を上げる。
 後は、彼が来るのを待つばかり。
 今は夕暮れ。
 もしかすると、もう来ているかもしれない。
「い、急がなきゃっ!」
 だが、たどり着いた待ち合わせ場所、星屑の丘にはまだ、彼の姿はなかった。

「ミヤ、なかなか来ないな……」
 気が付けば、空には沢山の星々が煌いていた。
 不安そうに辺りを見渡しながら、ヤツキは彼を待っていた。
 と、そこへ。
「何しているんだ?」
「ミヤっ!」
 ヤツキの目の前には、遅れてきたハルトがいた。
「遅い遅いっ!」
「悪いな、その、試練に梃子摺ってな」
「でも……来てくれたから許してあげる」
 先ほどの不安そうな顔はどこへやら、ヤツキの顔は笑顔でいっぱいだった。
 いや、そうでもないようだ。
「そうだ、ほら、星空見ようよっ」
 空を指差し、ヤツキは言う。
 こっちこっちとハルトを引っ張りながら、眺めのいい所で腰を下ろした。
「すっごく綺麗だね……」
「ああ……」
 二人はそろって空を見る。
 吸い込まれそうな星空が、辺りを包み込むように……。
「あ、そうだっ! これ、ミヤにチョコレートクッキー作ってみたの。……美味しくなかったら残していいよ……?」
 心配そうにハルトを見上げるヤツキ。
 その手には一生懸命作ったチョコレートクッキーがあった。
「サンキュ、ヤツキ」
 クッキーを受け取り、一口食べる。
「うん、美味しい」
「ほ、ほん……」
 ヤツキの言葉が途切れた。
 彼女の口には、ハルトが口移しで差し出されたクッキーが。
「………ミ、ミヤ……」
 頬を僅かに赤く染めながら、ヤツキは俯く。
「ヤツキ」
 そういって、ハルトはヤツキを抱きしめる。
「離さないから……だからずっと傍でお前と言う甘さを……いつまでも俺に」
 ヤツキもこくりと頷く。
「これからもずーっと傍にいさせてね。大好きだよ……」
 二人は甘いクッキーを食べながら、空を見上げる。
 幸せなひと時を大切な人と一緒に……。


イラスト: あすま