流れ星に誓う
● 流れ星に誓う
二人は星屑の丘に来ていた。
アシュレイは大切な恋人であるケラソスを誘い、ここまで来たのだが……緊張のあまり、何をしようとしていたのかをすっかり忘れてしまったのだ。
(「悩んでも仕方ない」)
アシュレイはケラソスの手を取り、こうして星屑の丘に着いたのだ。
「綺麗な空ですね……」
「ああ……綺麗、だな」
これではダメだ。
そう思い、アシュレイは星についての話を語り出す。
「……それでな……」
気持ちも落ち着いたのか、次第にアシュレイの緊張もほぐれていく。
と、そのとき、きらりと流れる星が。
「あ、流れ星……」
「流れ星に願いを叶える力があるらしいな」
流れゆく星を指差しながら、アシュレイは口を開く。
「ところで、ケラソスは何か願い事したのか?」
ケラソスは楽しげに微笑みながら、こう答えた。
「ええ、もう叶っています」
それはどんな願いなのか? 訊ねようとアシュレイが口を開こうとしたのだが、それは遮られてしまった。
「アシュレイさんは何を願ったんですか?」
その言葉に驚きながらもアシュレイは、答えた。
「その、なんだ………これからもずっとケラソスと一緒に居られたら良いなって願ったよ」
照れくさそうに笑いながら、アシュレイをそっと抱きしめ、キスをした。
「アシュレイさん」
「なんだ?」
「聞いて下さいますか? 私がどんな気持ちで参加したかを」
それは、ケラソスの告白。
「フォーナの女神様の前で照れながらも告白してくれてから。いえ、そのずっと前から、もしかしたら出会った時から、貴方に恋をしていたのかもしれません。楽団に入団したばかりの私に親しみを持って接してくれましたね。それが出会いでした」
ケラソスはそっとアシュレイの側に寄り添う。
「貴方が死地に赴こうとした時、どれだけ引き止めたかったか。でも、貴方が私の為に思い留まってくれたと聞いた時は、心から感謝しました」
その頭をアシュレイの胸に預けて。
「今ここで、一緒にこの時を過ごせる……どれだけ嬉しく思っているか分かりますか? 辛い時も楽しい時も一緒に居てくれて有難う。私はこんなにも幸せです。だから、言わせて下さい。貴方のことを愛しています。ずっとそばに居させて下さい……」
「ケラソス……」
アシュレイはそっとケラソスを抱きしめ、空を見上げる。
空にはまた、星が流れていた。
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イラスト: 秋月えいる