約束は果たされる

● 約束は果たされた

 空が夕暮れに染まり、やがて深く青く、そして黒い闇へと包まれていく中、ナポポラッサルは女神の木の下で、人を待っていた。
 でも……。
(「もう、アルグさんは来ないのかもしれないなぁ〜ん」)
 夜になって、星だってあんなにキレイに見えるのに、まだ彼女は現れない。
 でも、ナポポラッサルは、ここで約束の通り彼女を待ち続ける。
(「もし俺が帰ったあとにアルグさんがきたら、彼女はすっごく落ち込んじゃうだろうなぁ〜ん。……アルグさんを悲しませるなんてこと、したくないなぁ〜ん」)
 約束、したから。
 もし彼女が結局来なかったとしても、それならそれで構わないとナポポラッサルは思う。
 自分が彼女に会いたくて、笑いかけてあげたくて……ただ、それだけなのだから。

(「なぅぅ……盛大に遅刻しちまっただなぁ〜ん」)
 すっかり暗くなった夜の中、アルグは女神の木へと走っていた。
(「ナポさんも、もう帰っちまっただろうなぁ〜ん……」)
 そんな不安と、大幅に遅れてしまった申し訳無さとに表情を暗くしながらも、でも、とアルグは走る。
 約束だから。
 もしかしたら、彼はまだ、待っていてくれているかもしれないからと……。
「! ナポさん……」
 やがて女神の木へと辿り着いたアルグが目にしたのは、幹に寄りかかりながら立っている、ナポポラッサルの姿だった。
「……ただいまだなぁ〜んっ! ずっと……ずぅっと会いたかっただなぁ〜ん……♪」
 アルグは笑顔で、元気良く口にすると、彼に飛びつくように、ぎゅうっとその体を抱きしめる。
「待ってるって約束でしたからなぁ〜ん。約束は守りますなぁ〜ん。……ずっと君を護るって約束も、必ず守ってみせるなぁ〜ん」
 そんな彼女の体を抱きしめ返しながら、ナポポラッサルは確かな口調でそう告げる。
「あ、ナポさん。それから、これ……」
 少しして、体を離したアルグは、思い出したように、これまでずっと大切に持っていた、小さな包みを差し出す。
 中身は、チョコレートシュークリーム。そして一枚のメッセージカード。
「俺にですかなぁ〜ん?」
 ありがとうなぁ〜んと、それを受け取ったナポポラッサルは、メッセージカードを目にしながら、嬉しそうに笑みをこぼす。
 『世界で一番大好きなあなたへ』と、そこには記されていた。


イラスト: あすま