ランララ聖花祭〜『特別』な日〜
● ランララ聖花祭〜『特別』な日〜
ランララ聖花祭の日。昼下がりの朝露の花園に、1組のカップルの姿があった。
(「まさか、誰かと一緒にここに来ることになるとは、1年前に冒険者になった時は、思いもしなかったかな」)
そう心の中で呟くのは、ガルガルガ。
(「……初めてのランララ聖花祭だね……。君が隣に居てくれて……うん……とっても嬉しい……」)
その隣で、少し照れた顔で笑みながら歩くのは、ドークスだ。
2人は、花園の一角に腰を下ろすと、周囲に咲く花々を見つめながら共に過ごす。
「できた……はい、ガルガ……」
ふと手元の花を編んで、冠を作り始めたドーリスは、輪になったそれを掲げると、ガルガルガの頭の上に載せる。
それを、ガルガルガは大人しく受けながら微笑む。……彼女が、どうやら自分の事を、可愛いリザードマンだと思っている節がある事を、ガルガルガは知っていたから。
(「……アタシには、勿体無いくらい……」)
実際に、そんなガルガルガの姿を見て、ドーリスはその可愛らしさに笑んでいたけれど……あ、と小さく呟くと、持ってきたバスケットに手をやる。
手作りのお菓子を渡さなくちゃ、と。
「……ち……ちょっと大人の味にチャレンジしてみたんだ……」
そう言いながらカップケーキを取り出すと、ドーリスは、少しだけ緊張というか、恥ずかしそうというか、そんな仕草でフォークを手にして。
(「……普段は……恥ずかしくて……出来ないけど……今日は……特別……だから……」)
うん……と、ドーリスはカップケーキを一口大に切り分けると、それをガルガルガの口元に運ぶ。
「……は、はい……あーん……」
「食べさせてくれるのか、こりゃ大サービスだ」
そんなドーリスの仕草に、ガルガルガは明日は雪でも降るかなと笑いつつも、ケーキを口に含む。
「うん、ありがとう。美味しいよ」
それを飲み込むと小さく頷き返すガルガルガ。
付き合って、もう半年近く経つ……味の好みも、だいぶ分かるようになって来たのかもしれない。
「……よかった……」
ほっと小さく安堵の息をついて、ドーリスは笑みを零すと、もう一口とカップケーキを切り分けた。
空には、太陽が輝いていて。
ゆるやかな風が吹いていて。
2人は数多の花々に囲まれながら、穏やかに流れていく時間を過ごすのだった。
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叢に翳む月の魔女・ドーリス(a22835)
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月を翳す叢の騎士・ガルガルガ(a24664)
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イラスト: 青柳アキラ