いつまでも一緒に
● 繋がる思い
まだ伝えていない言葉がある。
だから、伝えよう。
ランララ聖花祭という、特別な日に……。
クルドは意気込んで、女神の木の下へと向かった。
が、しかし……。
「あ、あれ?」
どうやらまだ、彼女は来ていない様だ。
「ちょ、ちょっと早すぎましたかね?」
辺りを見渡してみるものの、やっぱり来ていない。
そのまましばらく待ってみるものの……。
「も、もしかして、途中で何かあったんじゃっ!?」
不安ばかりが先立ってしまう。
「いえ、もう少し……待ってみましょう」
クルドは不安を抱えながらも、必ず会えると信じて待つことにした。
そして、待つこと数時間後。
「クルド様ーっ!」
やっとユーナがやってきた。
その手にお菓子を持って。
「お待たせしてしまったようですわね?」
「いえいえ、先ほど着いたばかりです」
ちょっと嘘をつくクルド。
「そうですの? ならほっとしましたわ」
ユーナは安心したかのように、笑みを浮かべた。
いや、ここで終わってはいけない。
そう、ユーナは手にしたお菓子をクルドに渡さなくてはいけないのだ。
(「あなたに届けたいんです! この胸に秘めたはちきれんばかりの、この思いを!」)
口で言うのは恥ずかしいから、心の中で叫ぶユーナ。
「クルド様、その……クルド様の為に作って来たんですの」
そう言って、ユーナはそっとお菓子を手渡す。
「ありがとう、ユーナ」
クルドは笑顔で受け取り、そのまま袋を開けて。
「あ〜〜っ!!」
叫ぶユーナの目の前で、ぱくりとお菓子を食べるクルド。
「ん? ユーナ?」
「な、何で食べちゃうんですか! わたくしが「あ〜んして♪」って食べさせたかったのに〜〜」
それはユーナの甘い夢。
ユーナの言葉に思わずクルドは、笑みを浮かべる。
「じゃ、今からしましょう」
「え?」
次にきょとんとするのは、ユーナ。
「はい、あーんしてください」
「あ、あーん」
ぱくり。
ユーナの口の中に甘いクッキーの味が広がる。
「美味しいでしょう? とはいっても、ユーナから貰ったものなんですが」
「それじゃあ、今度はわたくしから」
「ええ」
「はい、あーんしてください♪」
「あーん」
こうして嬉しそうに、何度かクッキーを食べさせ合う二人。
「ユーナ」
静かにクルドは愛しい人の名を呼ぶ。
「はい」
応えたユーナを見て、クルドは今までいえなかった言葉を、やっと声に出せた。
「貴女が好きです」
(「そして、貴女のその笑顔のそばにずっといさせてくださいね」)
流石に心の中の言葉を声に出す事はできなかったが、けれど、長い間思っていた事をやっとユーナに伝えられた。
「………よかった、やっと言えました」
思わず口から漏れる本音。
ユーナも微笑んで頷いた。
「わたくしも……貴方が好きです」
その言葉を合図に、クルドは自分の唇を、彼女の唇に重ねたのであった。
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イラスト: 秋月えいる