だいすき♪

● 餌付け中

 ジオとリーンは、女神の木に寄りかかるように座っていた。
「はい、ジオくん」
 リーンはチョコレートを指でつまむと、ジオの膝の上に乗りながら、そう指先を彼の口元へ運ぶ。
「ありがとなぁ〜ん」
 言いながら、チョコレートを食べようとするジオだけれど、何だかちょっぴり照れてしまう。
 いつも一緒に居るのに、こうして間近に顔をあわせてみると、少し普段とは違っているような気がして……こんな風にチョコレートを差し出されると、尚更照れ臭く感じてしまう。
(「でもリーンちゃんだし、気にすることも無いなぁ〜んかな?」)
 ジオは、気にしない気にしないと、小さく胸の内で呟くと、彼女の体勢を支えるように、その背中に腕を回しながら、有難く彼女のチョコレートを食べる事にする。
「きゃ……」
 指先のチョコレートを含もうとすると、その拍子に、ジオはリーンの指先まで一緒にかすめてしまう。
 思わずリーンの口から漏れる声。
「うっかり舐めちゃったなぁ〜ん。ごめんなぁ〜ん」
 謝るジオに、気にしないでと首を振るリーンだが、その頬は赤く染まっている。
 ……どきどきする。
 だって……リーンにとって、彼は最愛の人。
 とってもとっても大切で、大好きな人に、そんな事をされてしまったら……。
「! はうぅぅ〜」
 赤くなったまま、ふと、むにむにとジオの耳を弄るリーン。耳を引かれるのに弱い彼は、その手つきに、ふにゃふにゃと声を漏らす。
「ふふ……」
 そんなジオの様子に、微かに笑みつつリーンは思う。
 ――とっても大切なお兄ちゃん。
 ずーっと、ずーっと一緒に居てね。
 一番近くに居てね。
 大好き、なの……。

「……ジオくん。ちょこ、付いてるの」
 じゃれるように過ごしながら、チョコレートを食べるうち。
 ジオの口端にチョコレートが付いているのを見つけたリーンは、微かに触れるように、ちゅっと唇を寄せて、それを食べる。
「ありがとなぁ〜ん。……楽しくて美味しくて、今日もとっても良い日なぁ〜ん」
 そう笑うジオの様子は、本当にリーンの仕草を気にしていないようで……彼がリーンを好きなのは、あくまでも『妹』としてでしかない事を思わせて、少しだけリーンを寂しがらせたけど。
 けれど……こうして一緒に時を過ごすだけでも、嬉しいと、そうリーンは微笑みながら、また次のチョコレートに触れた。


イラスト: ふにゅ