二人の聖花祭 〜昼〜

● ランララの昼下がり 〜小鳥とランチとピクニック〜

 先に女神の木の下にたどり着いたのは、ミャアだった。
「ガリュード、どこかなぁ」
 きょろきょろと辺りを見渡す。
 沢山の恋人たちが集い、そして、別の場所へと移動していくのを眺めながら、ガリュードの姿を探す。
 と、見つけた。
 ガリュードが女神の木の下にたどり着き、大の字に寝転がるのを。
 ミャアはそっとガリュードの元へ近づく。
「早いねぇ」
 小さな包みをガリュードの額に乗せて、ミャアは笑顔を浮かべた。

(「やっぱり先に来ていたか」)
 ガリュードは先に来てるだろうという、自分の予想が当たった事に思わず、ニヤリと笑う。
「よっと」
 勢い良く起き上がる。もちろん、額に乗せた包みはちゃんと手に持って。
「お昼まだでしょぉ? 遅めだけどランチにしよ?」
 そのミャアの提案に。
「そういや、腹が減ってたっけ……」
 苦笑を浮かべ、受け入れるガリュード。
 ミャアはさっそくバスケットを開いた。
「メニューは、サーモンとトマトとクリームチーズのオープンサンドなのぉ」
「お、サンキュ」
 ミャアから渡されたオープンサンドを豪快に噛り付くガリュード。
「おおっ、んまいじゃねぇか。けど……多過ぎねぇか?」
 食べている途中で、ガリュードはバスケットの中身をチェックした。
 言われてみれば、ちょっと多いのかもしれない。
「愛があれば、全部食べられるでしょ?」
「おいおい」
 ミャアが注いだ水筒の飲み物を飲み干しながら、ガリュードは思わず呟く。
「……と言うのは冗談として。ちょっと多い分のパンはこうやって……小鳥を呼んでみたりとかさぁ?」
 オープンサンドを細かくちぎって、寄って来た小鳥にあげる。
 そして、気づけばミャアの周りには、たくさんの小鳥達が集まってきていた。
「きゃ、こんなに来ちゃったぁ」
 そう言ってミャアは笑っていた。どうやら、楽しくて仕方ないといった様子である。
 そのミャアの様子を、ガリュードは微笑みながら、見守っていた。
(「こう、無邪気に笑ってるとホント可愛いんだよなぁ……。口開くと結構きっつい事言うんだけどさ。ま、それも可愛いと思えるんだから末期症状か……」)
 そう思い、くすりと笑ってしまう。
「ガリュード、今、あたしのこと、笑った?」
「いや、自分の考えに笑っていたんだよ」
「そうなのぉ?」
 ミャアはそんなガリュードを見ながら。
(「うん、あたしは、やっぱりガリュードと一緒にいるのがいい」)
 ミャアも思わず笑う。
「何だ、お前も俺のこと笑ったのか?」
「内緒♪」

 二人の幸せなランチタイムは、バスケットの中身がなくなるまで続いた。
 小鳥と共に幸せな時間を楽しみながら……。


イラスト: 葎