少しだけ焼きすぎちゃったけど、きっと大丈夫v

● 少しだけ焼きすぎちゃったけど、きっと大丈夫v

「タクト、えとね……」
 少し顔を赤らめて、照れたような仕草で、ジャジャはラッピングした箱を取り出した。
 中身はクッキー。
 ジャジャがタクトの為に焼いた、手作りクッキーが詰めてある。
 ランララ聖花祭のこの日、彼に贈ろうと用意したプレゼントだ。
「……ホントに? やった! ひゃっほうい!」
 はい、と箱を差し出すジャジャの言葉に、1度まばたきすると、小躍りしながら手を伸ばすタクト。
「ありがとうジャジャ〜♪」
 嬉しくて嬉しくて。
 本当に本当に、心の底から嬉しくて。
 そのまますぐにリボンを解いて、箱を開けてみるタクトだったけれど。

 ………。

 箱の中に入っていたのは、真っ黒に焦げた何かの塊だった。
 ジャジャの言葉を信じるならば、これはクッキーなのだろう。
 あんまりにも黒すぎて、そう聞いていなければクッキーだとは解らなかったかもしれないけど……。

「結構良い具合に焼けたなぁ〜んよ♪ 是非タクトに食べてほしいなぁ〜ん!」
 思わず固まったタクトの様子には気付いていないのか。
 モジモジしながら、そんな風に告げてタクトを見つめるジャジャ。
(「こ、これ食べて大丈夫なのかな……ていうか、食べなきゃダメ? ……ダメだよなぁ、せっかく作ってくれたんだし……」)
 その視線を前に、だらだらと何かが流れるのを感じつつも思うタクト。
 中身は、どこからどう見ても真っ黒にしか見えないクッキーなのだけれど、ジャジャは全然気にしていないようだ。彼女にとっては、せいぜい「ちょっぴり焼きすぎてしまったかも」程度の物なのだろう。
「と、とってもいいキツネグド……キ、キツネ色だね、うん!」
 タクトは汗を浮かべながらも、そうどこかぎこちない笑みと共に告げ……やがて、意を決したように、クッキーへと手を伸ばすのだった……。


イラスト: ナギ