ランララ聖花祭〜女神の木にて〜

● 女神の木の下で…

 初めてのランララ聖花祭。
 アルフィミィは、ランララの女神の木の下にお菓子を奉納すると、ルキの姿を探した。
 どうやら、まだ来ていないが、ルキに誘われたというだけで、こんなにも嬉しくなってしまう。
 いつの間にか、アルフィミィの顔に笑みが零れる。
 ああ、早く彼は来ないだろうか?

 一方、ルキはというと。
 少々、試練に手間取ったが、着実に女神の木の下へと向かっていた。
「アルフィと待ち合わせ……か」
 無事会えるだろうかという、不安が付きまとう。もし会えなかったら?

 ルキの不安は杞憂に終わった。
 無事、二人は再会できたのだから。
 アルフィミィは笑顔でルキを迎えた。
 そして、恥ずかしそうに頬を染めて、手に持っていたお菓子を手渡す。
「これ……ルキの分のチョコ……だ」
「え……? これ……いいのか?」
 そのルキの言葉にこくりと頷く、アルフィミィ。少し不安そうな顔をしている。
「ん……、ありがとな。凄い嬉しい」
 そういって、ルキは微笑み、アルフィミィから手渡されたお菓子を受け取った。
「慌てて作ったから……見た目は悪いが、味は大丈夫……のはず」
 焦りながら、アルフィミィはそう言った。どうやら、ルキに受け取ってもらえて、驚きと喜びがごっちゃになって焦っているようだ。その様子にルキは安心させるかのように、また微笑む。
「ん、それでも平気だ」
 そして、照れたようにルキも持ってきたお菓子を手渡す。
「その、男からあげても問題……無いよな?」
 アルフィミィはぶんぶんと首を横に振り。
「あ、ありがとう。嬉しい……」
 頬を染めながら、嬉しそうに微笑んだ。

 女神の木の下で座り、互いに渡されたプレゼントの中身を開いた。
 ルキの手には、アルフィミィの作った手作りチョコ。
 アルフィミィの手には、ルキの作った手作りクッキー。
 さっそく、アルフィミィがクッキーを食べてみる。
「これ……凄く美味しいよ」
 心配そうに様子を見ていたルキは、ほっと安心したような笑みを浮かべた。
「そ、そうか。良かった……。不味いと言われたらどうしようかと……」
 その言葉にアルフィミィが笑みを浮かべる。
「俺も、食べてみてもいいか……?」
「ああ」
 アルフィミィの承諾を得て、ルキもチョコを口にする。
「……どう…だ?」
 ルキと同じように心配そうに見つめるアルフィミィ。
「………ん?」
 ルキはちょこんと首を傾げ、アルフィミィの顔が青くなっていく。
「はは、冗談だ」
 そういって笑うルキにアルフィミィは、少しむっとしてしまう。
「凄く美味い。本当に……」
「ほ、本当なんだろうな?」
「本当だってば」
 しばらく押し問答していたが、ようやく信じてもらえたようだ。
「一緒に来てくれて本当嬉しかった。今日はありがとな」
「ルキ……」
 ルキの言葉にアルフィミィは、嬉しそうに微笑んだ。

(「この日に感謝しよう。そして、世界で一番大切な人と、この先もずっと一緒にいられるように……」)
 ルキは願う。
(「大好き……愛してる。一番大切な人。これからも……この幸せが続きますように……」)
 そして、アルフィミィも願う。
 二人はまだ知らない。互いに同じような事を考えているとは……。
 だが、二人にとって、今日という日が、特別な日になったのは言うまでもない。


イラスト: みなみすばる