星瞬く空の下で…
● 星瞬く空の下で…
二人は星屑の丘に来ていた。
今は静かな夜。
空には溢れんばかりの星々が瞬いていた。
と、二人の側を涼しげな風が横切る。
「風が冷たいであるな……クリア嬢、寒くは無いであるかな?」
そういってクロムロックは、自分のマントを隣にいるクリアに掛けてあげた。
まるで自分のマントで包み込むように。
「あ、ありがとう……ございます……」
クリアはそっと、クロムロックに寄り添うように、肩を近づけた。
クロムロックは、クリアの肩をそっと抱きしめる。
(「……と、つい肩など抱いてしまったのであるが、これは我輩一体何をどうしたら!? むしろこれでは動くに動けないのであるぞ――!?」)
その後の事を全然考えていなかったクロムロック。今、彼の頭の中はパニック状態である。
そして、彼が導き出した答えは。
「ほ、星が綺麗であるな」
星を眺め続ける事であった。
「は、はい……そ、その……流れ星、見えませんね……」
「流れ星であるか?」
クロムロックが彼女の為に、周囲を見渡すが、星は一向に流れる様子を見せない。
「あ、み、見えなかったらいいんですー」
恥ずかしそうに俯きながら、クリアがそう言う。
「しかし、クリア嬢……」
「ほ、本当にいいんです。その、ずっと一緒にいれますようにってお願いしたかっただけですから……」
「へ?」
思わず、奇声を発してしまうクロムロック。
クリアはというと自分の言葉に顔を真っ赤にさせていた。
(「こ、これはつまり……」)
クロムロックが答えを導く前に。
「……ずっと、ずっと大好きです……」
消え入るような小さな声での告白。
その言葉にクロムロックも、恥ずかしそうに頬を染める。
だが、こうして二人きりの時間を持てた事に感謝したくて。
「我輩は……強くも無く、優しくも無く、悪の道にしか生きられぬ男である。そんな男が誰かにずっと傍に居て欲しいと。そう願うのは罪であろうか……いや、罪でも良いのであるな」
クロムロックは、言葉を続ける。
「何故我輩がクリアを大切に想うのか。自分に問うても答えは出ないのである。けれどただ、愛しいと言うこと。それだけは、一点の曇りも無く真実だと、我輩は信じられるのであるよ」
「クロムさん……」
クロムロックの横顔を見つめ、そしてクリアは、思い切った行動をした。
その頬にキスをしたのだ。
「くくく、クリア嬢!?」
「あ、あの、その、め、迷惑でしたー!?」
お互い顔を真っ赤にさせて、驚いている。
「い、いや、その……」
と、クロムロックが何かを言おうとしたときだった。
「あ、クリア嬢! 流れ星であるぞ!」
「あっ」
結局、二人が流れ星に願いをかけられたのか。
それは、二人だけの心の中に……。
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イラスト: 風音昴