星降る夜の演奏会

● 星降る夜の演奏会

「はわ……綺麗な星空〜♪ 見てみてコーガちゃん。すごいよ、すごいよ!」
 星屑の丘へとやって来たヘルディスターは、満天の星空を見上げると、きらきら瞳を輝かせて、すぐ後ろを歩いて来る、コーガの姿を振り返った。
「こんなに綺麗な星空、初めて見たよ〜」
 実に感動した様子ではしゃぐヘルディスターの様子に、コーガは「本当だな……」と頷くと、持参したお茶会セットを広げ始める。
 美味しいお茶とお弁当をお供に、この素敵な星空の下で過ごすだなんて……本当に楽しそうだと思いながら、2人はおいに連れて来たペットと共に腰を下ろす。

「……そうだ♪ せっかくこんな素敵な場所なんだし、一緒に演奏会、しない?」
 お弁当を空にして、ティーカップを手に星空の下での雑談を楽しんでいたヘルディスターは、ふと閃いたという様子で、そうコーガに提案する。
「いいな、それ。確かに楽しそうだぜ。んじゃ、俺は二胡を弾くとするか」
「二胡? 僕、二胡の音色を聞くのって初めて♪」
 どんな音色なのかなぁと、うきわく楽しげな様子のヘルディスター。その様子にくすりと笑いつつ、コーガは弦を弾き始める。
 その直後、辺りには流麗な響きが広がる。
「これが二胡かぁ……♪」
 耳を澄ませて、少しだけその音色に耳を傾けたヘルディスターは、「じゃあ僕も」と立ち上がる。
 といっても、彼はコーガのように楽器を奏でる訳ではない。楽器は全く出来ないけれど……でも、歌と舞には自信があるから。
(「お歌も舞も、とってもとっても大好きなの……コーガちゃんにも、気に入って貰えると嬉しいな♪」)
 響く音色のその上に、歌声を重ねながら、ヘルディスターはゆるやかに舞い始める。
「へぇ……上手だな……」
 指先を繰りながら、コーガは彼の舞を目に関心の声を漏らす。それは、技巧的な事よりも、何よりも……とにかく、本当に、とてもとても楽しそうで。
 それを見ているコーガの方まで、演奏するのが楽しくなって来るから不思議だ。
「もう一曲やるか?」
「うんっ♪」
 今度は、また違った曲調の音色が紡がれて……2人の演奏会は、なおも続く。
(「きっと、星たちも喜んでいてくれてるよね……♪」)
 まるで、そんな彼らを見守るかのように、空ではずっと、星達がきらめいているのだった――。


イラスト: synn