二人一緒なら、寒くないよ、ね?

● 流れ星の丘で

「とっておきの場所を見つけておいたんだよ。ほら、ここからなら、街の灯も、空の灯も、両方ともよく見えるだろう?」
 シュイを丘の上まで案内したナオは、そう彼女の方を振り返った。
「きれいなぁ〜ん〜」
 広がる風景を目にして笑うシュイの様子に、ナオは自身も嬉しそうに笑う。
 この日の為にと、星が綺麗に見える場所を探して……そうして、ようやく見つけた場所だったから、彼女が喜んでくれたなら、それはとても嬉しくて。
 そして、こうして一緒に綺麗な星空を眺められることが、本当に本当に、とても嬉しくて……。
 素敵な場所を探す為、頑張った甲斐があったと、そう心の底からナオは思う。
(「……そもそも、私にまた大切な人が出来るなんて……思ってもいなかったから……」)
 三年前にあのひとを亡くした、その傷を、何も聞かずにそっと包んでくれた彼女。
 彼女がいたからこそ、こうして今……自分は幸せな気持ちになれるのだろう。

「寒くないかい? 温かいお茶を用意してあるからね」
「ありがとうなぁ〜ん〜」
 こくりと頷いて、シュイはお茶の入ったカップを受け取る。
 さすがに夜になると、この格好では少し肌寒い。……でも、心の中だけは、ほんわかとして暖かかった。
(「ワイルドファイアで見る夜空と、空の高さが違うせいなのか……だいすきなひとと、一緒のせいなのか……とっても、胸がどきどきしますなぁ〜ん〜」)
 ちらりとナオを見ながら、シュイは思う。
 こうやって、誘ってくれたのも。
 お茶を用意してくれたのも。
 心配してくれるのも。
 笑ってくれるのも――。
 それは、全部大人のあなたで。子供の自分には、一体何が出来るのかと思ってしまうけれど……。
(「あたしがしてあげられるのは……だいすきでいることですなぁ〜ん〜……」)
 ナオと一緒で幸せだから……彼も、自分と一緒にいる事を幸せだと思ってくれるように、頑張りたいとシュイは思う。
 初めて会ったその日から、どんどん『だいすき』になっていく……あなたのために。

「……いちばん、だいすきです……なぁ〜ん〜……」
「シュイ……好きだよ……」
 もっともっと、いい言葉で伝えられたらと、そう思いながらもシュイが紡いだ想いに、ナオは、本当にこんなにも幸せで良いのだろうかと、奥底から湧き上がる幸せをかみ締める。
「……これからもずっと、こんな幸せが続くといいね……」
 そう呟きながら、ナオはシュイの体が冷えないようにと、彼女の肩にそっと上着をかけると、すぐ傍へと寄り添う。

「……あ、流れ星だよ」
 すっと煌めいて流れていく星を、2人で一緒に見上げる。
 一緒なら、きっと暖かいはずだから。
 この場所でしか見れない景色を、眺めながら一緒に過ごそう。
 今夜は……これからも、ずっと……。


イラスト: 琥姫ミオ