☆Sweet Heart☆-Bitter flavor-
● 世界で1番大好きな笑顔は…いつも隣に…
「プレゼントなぁ〜ん」
さえずりの泉の畔で、桜色に頬を染めたニノンが差し出したのは、大きなハート型チョコレート。ぱっと笑みを咲かせるキュオンに、ニノンは照れた様な微笑を返す。
「お砂糖の代わりに、あま〜い愛をたっぷり詰め込んであるなぁ〜ん」
「ありがとう、とっても美味しそう。じゃあ俺からも……」
キュオンの言葉と共に、両手一杯の向日葵の花束を差し出す。
「ランララって別に女の子からだけじゃないよね?」
そう、キュオンは悪戯っぽく笑う。驚きに青の双眸を大きく見開いて花束を受け取るニノン。
「ありがとうなぁ〜ん。あたし、とっても、とっても嬉しいなぁ〜ん」
ニノンの顔に綺麗な笑みが花開く。キュオンを魅了して止まない、春陽の如くに煌く笑顔だ。ぎゅっと花束を抱き締めるニノン。眦に宝石の様な涙が浮かび、虹を散らす。
ああ、とても幸せだ――キュオンは思う。
大好きなニノンの笑顔を見る事ができて幸せだと、そう思いながらキュオンはニノンの頬に手を伸べて涙を拭う。
向日葵の花は「熱愛・愛慕・あなたを見つめる」という言葉を持つのだと言う。
あたしは自分に自信がなくて――ニノンは思う。女の子の誰からも好かれるあなたを少し不安に思うことがあるけれど……あたしだけを見つめていてくれる……そんな言葉を持つ花をあなたは贈ってくれた。
「嬉しいなぁ〜ん」
頬に手の熱さを感じながらニノンはもう一度繰り返し。
それから2人、チョコレートを食べた。
チョコレートを箱から取り出して、大きく一口食べるキュオン。かりっとチョコレートを噛み砕く小気味良い音が。キュオンは目を閉じてチョコレートを味わう。キュオンに凭れ掛かり、ちょっとだけ緊張した様にピンク色のノソリン尻尾の先を揺らしながら唇を見詰めるニノン。
「……ん、美味しい♪ オレでも美味しく食べられるよ♪」
美味しいと大好きを何よりも伝える、太陽の様な笑みを見せるキュオン。それがニノンにとっては世界で一番の笑顔だった。自分の作ったチョコレートでそんな笑顔を見る事が出来で最高に幸せで堪らなくて、思わずニノンも微笑む。
その照れた様な笑みと、ほっとした様に唇から毀れた吐息。心配げな瞳の上で震える睫毛と、柔らかな稜線を描く頬。唇で触れられるほど近くにあるニノンの全てが愛しくて、キュオンはニノンの髪を優しく掻き上げた。
「チョコのお礼に……ニノンちゃんにもほろ苦ビター風味をプレゼント♪」
言って、大人のキス。深く甘く、どこかほろ苦いビターチョコレートの味のキスをニノンの唇に与えるキュオン。舌が蕩け合い、心と唇を2人は交わして。
「大好きだよ♪」
最後にキュオンは囁き、もう一度深く口付けた。
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イラスト: ゆく
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