* 実りの日 *

● 実りの日

 ここは女神の木の下。
 誰かとの約束というのもなかったが……シュンは、この女神の木の下に来てしまった。
 ただ何となく来たのだが……。
「あれは……ミイル?」
 そこに、ミイルは立っていた。
 そわそわと誰かを待っているかのように、辺りを見渡している。
「ミイル!」
 思わず声をかけるシュン。
「あ、シュンどの……お久しぶりじゃのぅ」
 そう、ミイルが微笑んだ。
(「俺の事、覚えていてくれたのか?」)
 嬉しくなり、シュンはミイルとしばし語り合うのであった。

 笑ったり、緊張したりところころと表情を変えながら、楽しそうに話すミイル。
 そのミイルの姿を見ている内に、シュンは次第に可愛いと思うようになった。
 それだけではない。
 愛しいとさえ、考えるようになっていた。

(「他に想っている女子等がいらっしゃるのかのぅ……?」)
 ミイル、実は密かにシュンの事を想っていた。
 けれど、不安でシュンに気持ちを確かめる事などできなかった。

 そして、シュンは気づく。
 日の暮れる女神の木の下で、シュンは口を開いていた。
 このまま、別れたくなかったからと……。
「その……俺と付き合ってくれないか?」
 気づけばそう、ミイルに告げていた。
 緊張した面持ちで、そうシュンはミイルを見つめる。
「あぅ……は、はいなのじゃ。嬉しいのじゃ〜……♪」
 ミイルはそういって、頷いた。
 天にも昇るような気持ち。
 それは、シュンもミイルも同じであった。

 結ばれた二人。
 場所を変えて、今は星空の綺麗な星屑の丘に来ていた。
「特別なイベント等なくとも、シュンどのとこうしてゆるりとお話できれば嬉しいのじゃ♪」
「ああ、俺もだ」
 と、シュンが、ミイルが寒そうにしているのに気づいた。
 シュンは黙って、自分の上着をかけてやる。
「あ、ありがとうなのじゃ……」
「いやその、寒そうだったから……」
 二人は微笑み合う。
「いつまでも仲よぅ……お傍においていただきたいのぅ……」
「誰が離すものか……すっと一緒に居ような」
 こうして二人は、ゆっくりと星空を見上げるのであった。


イラスト: うに